この財務省調査を受けて、厚労省が同分科会で問題提起した。「生活援助のみの利用者の中に、月31回以上の利用者が一定程度おり、報酬のあり方について、どう考えるか」と投げかけた。

 同時に、厚労省は参考資料として、財務省の予算執行調査そのものも配布した。そこには、訪問介護が月90回以上の21人の個別事例が要介護別と17市区町村別に明記されて一覧表になっている。

出所)厚生労働省「介護保険総合データベース(平成28年9月サービス実施、10月審査分)

 最も多い訪問回数101回は北海道標津町での要介護3であり、次いで98回が大阪市と神戸市の3人。もう一人が91回だが、残りの16人は全員が90回である。

 この表を眺めながら、同分科会の25人の委員が次々と意見を述べた。

 井上隆・経団連常務理事は、「月100回を超える生活援助というのは、誰が見ても異様な数字になっております。こういう数字が制度自体の信頼性を失いかねません」と批判した。

 本多伸行・健康保険組合連合会理事も「月100回を超えて利用されているケースもある状況を見ると、必要以上のサービスが提供されていないか、過剰なサービス提供はかえって自立支援の阻害になるのではないかという懸念があるところです」と、同じように100回にこだわる。

 さらに、東憲太郎・全国老人保健施設協会会長も「月100回を超えて利用されている方もいるとのデータが示されております。これほど訪問しなければいけない例があるのかなと疑問に感じます」と追い打ちをかける。

 100回という数字が委員たちに衝撃を与えたようだ。3桁の数字は、「多い」と感じさせるに十分だ。なかでも、生活援助そのものを介護サービスに含ませることへの懸念を持つ委員には、またとない根拠データに映ったのであろう。

 本多委員は「介護保険創設時におきましても、介護を伴わない家事援助は介護保険に入れる必要がないのではないかという議論もあったと聞いております」と、念を押すようにかつての争点を持ち出した。

 財務省が介護保険のデータベースを調べに調べて、抜き出してきた21人の一覧表。その労が十分報われ、「過剰なサービス」「無駄使い」という印象を与えたという点では成功したようだ。介護保険サービスの縮減を図りたい財務省としては「してやったり」であった。

 ところが、その次に発言した田部井康夫・「認知症の人と家族の会」理事の言葉で明らかに空気が少し変わった。一語一語かみしめるように話し出した。