ところが、これが逆にばねとなったのか、福井県営陸上競技場で開かれていた「日本学生対校選手権」の2日目、男子100m決勝でついに9秒98の記録を打ち立て、日本人で初めての9秒台選手となった。

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 これは1998年の伊東浩司選手が記録した10秒00の記録以来、実に19年ぶりの日本新記録であるが、これだけ長い年月を要したということは、やはり、「10秒の壁」が厳然として存在していたということでもある。

 こうした点を明快にあらわすデータグラフとして、陸上男子100m走の日本記録と世界記録について、X軸に時間の経過、Y軸に記録タイムを取りプロットしてつなげた図を作成した(図1)。定番となって然るべきグラフだと思うが、新聞紙上などでは、なぜか見かけられない。

 グラフの推移を見ると、日本記録も世界記録もいったん記録更新が始まり出すと、一気にそれが進む傾向があるように見える。誰かが壁を破れば、後続がなだれを打ったかのように、これに続こうとするという心理的要因のためなのか、あるいはトレーニング方法の革新や、トラックやスパイクの進化といった時代変化のためなのか、いずれかなのだろう。