今週(10~16日)は自殺予防週間だ。一度、自殺を試みた人が再び自殺しようとする確率は高く、何らかの精神疾患を抱える人が多い。横浜市立大学附属市民総合医療センター・救命救急センターでは、自殺未遂患者を「再び自殺させない」という考えで、救命救急と精神科が連携し、精神科医が常駐している。医療現場の実態などについて、日野耕介医師に聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

搬送されてきたのは
以前診た「再自殺者」だった

 横浜市立大学附属市民総合医療センター・救命救急センター。救急搬送されてきた患者の顔を見るなり、日野耕介医師は「頭の中が真っ白になった」。

「再自殺させない」救命医療の現場に精神科医が常駐する理由横浜市立大学附属市民総合医療センターの高度救命救急センターは、年間約150人の自殺企図者を受け入れている

 数ヵ月前にも自殺を図り、搬送されてきた患者だったからだ。

 日野医師は、救命救急センターに常駐する、日本でも数少ない精神科医である。

「そういう時って、嫌な予感がするんですよね。なんだか落ち着かなくて、呼ばれてもいないのに救急外来に立ち寄ったら、その患者さんが搬送されてきたのです」

 懸命な蘇生もむなしく、患者の魂が戻ってくることはなかった。

 警察庁の統計によると、2016年の自殺者数は前年比2128人減の2万1897人で、7年連続で減少し、22年ぶりに2万2000人を下回った。

 一度でも自殺しようとした人が、再度、自殺をはかる確率は非常に高く、その後の自殺の最大危険因子と言われている。

 しかも、自殺をはかり、救急搬送された人の多くは、精神科の疾患を抱えている。その率は、横浜市大病院の場合、なんと9割以上。