「サービス残業」は言うに及ばず、「名ばかり管理職」や「みなし労働」「職務手当」の名のもとに残業代を不当に支払わない企業が増えている。残業代を払わないだけあって、会社に請求しても簡単に支払ってくれないのが現実だ。そんななか、「労働審判」という制度を使えば、比較的簡単に残業代を取り返すことができるという。
黙っていては支払われない
申請すれば、自分のお金が返ってくる!
〈1 相手方は、申立人に対して、金712万3987円及びこれに対する平成22年4月1日から支払い済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。〉
これは、会社員のAさんが労働審判手続申立書に記した一文です。
残業代未払いの件で相談にやってきたAさんに労働審判への申立てを勧めたところ、Aさんはさっそく2年分の残業代を取り戻すべく手続きを行いました。
「相手方」とはAさんが勤めていた会社、「金712万3987円」は、本来支払うべきなのに支払われなかった残業代、つまり“不払い賃金”です。Aさんの仕事は営業で、会社は労働時間の算定が困難な「みなし労働」という理由で残業代を支払わなかったのです。
労働審判の結果は、どうだったのでしょうか。
〈1 相手方は、申立人に対し、本件解決金として540万円の支払義務があることを認め、これを平成22年8月20日限り、○○銀行△△支店の申立人「A」(実際は氏名)名義の普通預金口座(口座番号×××)に振り込む方法により支払う。〉
こちらは、裁判所書記官の名前で作成された「労働審判手続期日調書(調停成立)」の一文です。
労働審判官(地方裁判所裁判官)および労働審判員(民間人)がAさんと会社の間に立って話し合いが行われた結果、Aさんの仕事は「みなし労働」に当たらないことが認められ、Aさんは540万円の不払い賃金を手にすることができました。
労働審判の申立てを行わず、直接会社に請求してもおそらく一蹴され、1円も入らなかったことでしょう。