「正直しんどかったです…」若手が次々辞める“ホワイト職場”に足りない3つのこと【専門家が解説】写真はイメージです Photo:PIXTA

働きやすい“ホワイト職場”のはずなのに若手がすぐに辞めてしまう、パワハラやモラハラには細心の注意を払っているのに――。そんな悩みを抱える会社が増えてます。いったい何が原因なのでしょうか?改善点も併せて解説します。(特定社会保険労務士 採用定着士、大槻経営労務管理事務所 鈴木麻耶)

指導にあれだけ気を遣ったのに…
新人からまさかの「退職願い」が!

「Aさんといつも一緒に来てたKさんが、アポも取らずに突然メールで変な見積もりを送ってきたけど、どうしたの?」

 メーカー勤務のAさんは、取引先の中で一番気難しいT社の部長から不穏な電話を受けました。

「大変申し訳ございません!確認して私から改めさせていただきます」

 AさんはKさんの指導係です。入社してもうすぐ1年のKさんに、取引先を渡していこう(ただし先方の担当者が温厚かつ小規模で安心・安定の取引先)と思案していた最中の出来事でした。

 真っ青になってKさんを問いただすと、もう自分でできると思ってT社に見積書をメールしたのこと。

「こっちの方がタイパいいですよ…」と本人は弁明していましたが、それどころではありません。

 とにかくT社の不信感を何とかしなければいけません。上司に報告したところ、「Aがフォローして。Kさんは定時で帰らせて」との指示。結局Aさんが残業し、数日のアフターフォローを経て、何とか事なきを得ました。

 ところが…1週間後、Kさんから仰天発言が飛び出します。

「なんか期待されてない気がして…。ここではキャリアアップできないので退職します」「いつも気を遣われ過ぎて、正直しんどかったです」

 Aさんは膝から崩れ落ちそうになるのをどうにか堪えながら、これまでの出来事を振り返りました。Kさんができたことは小さなことでもひとつずつ褒め、上司からの指示でクレーム処理もさせず、緊急対応はAさんが残業して巻き取りました。そろそろ、絶対失敗しないであろう優良な取引先から引き継ぎしようとしていたのに…。

 Kさんはいったい何が不満だったのでしょうか。Aさんや上司に問題点はあったのでしょうか。