妊娠している女性を見る同僚写真はイメージです Photo:PIXTA

次世代をになう子どもは社会の宝だ。ところが、ある企業のベテラン経理社員Xさんが、第2子の妊娠を会社に報告したところ、上司は「あなたのためだから」と雇用形態の変更を強要したという。納得がいかないXさんは、どう戦ったのか?※本稿は、ブラック企業被害対策弁護団『ブラック企業戦記 トンデモ経営者・上司との争い方と解決法』(角川新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「あなたのため」と執拗に説得
妊娠した社員に自主退社を迫る

 今回はまごうことなきマタニティ・ハラスメントを行ったブラック企業について紹介したい。

 Xさんは10年以上にわたってその会社の経理部で正社員として勤務し、経理に精通したベテラン社員であった。上司からの信頼も厚く、重要な業務も任されていた。

 ところが、第2子の妊娠を上司に報告したのをきっかけに突然、呼び出しを受けるようになる。上司である経理部長だ。呼び出しの冒頭から上司は、今すぐ正社員からパート社員になってほしい、難しいなら解雇もありうると説明してきた。あまりに突然のことであったためXさんが理由を教えてほしいと質問したところ、上司は、第2子を妊娠したことの心証が悪いと言ってのけたのである。

 そこから執拗な呼び出しが続き、その回数はわずか2カ月で合計10回近くにのぼった。

 Xさんは「正社員のままでお願いします」「パートとして働くのは考えてないです」「とにかく今はパート社員にはなりたくないです」と今後も正社員として勤務していきたいと何度も何度も伝えた。