戸建て住宅事業に比べて、あまり目立たない存在ではあるが、大和ハウス工業の賃貸住宅事業は営業利益全体の半分以上を稼ぎ出す主力事業だ。貸家市場が低迷するなかでも、堅調に業績を伸ばしてきた。今後は需要増が見込める高齢者と女性に的を絞り、いっそうの高みを目指すその戦略と課題を分析する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)
「素敵なデザインですが、どのくらいの費用がかかるのですか」
来訪者は営業マンの説明を熱心に聞き、質問を繰り返す。住宅展示場では、おなじみの光景だ。
ただし、ここは通常の住宅展示場ではなく、都内の2階建て集合住宅の一室。来訪者も家族連れではなく、地主や不動産投資家などが中心だ。
詳しくは後述するが、大和ハウス工業が女性専用の賃貸住宅としてオープンしたモデルルームなのである。
賃貸住宅のモデルルームは、住宅業界ではきわめて異例。それだけに、同社にとって賃貸住宅にかける情熱ぶりがわかる。
住宅メーカーの住宅事業とは、顧客の注文を受けて建設する戸建て住宅と、地主などが家賃収入を得るための賃貸住宅に大別される。
大和ハウスは日本を代表する戸建て住宅メーカーとして有名だが、賃貸住宅でも大手の一角を占める。シェア16%を超える首位の大東建託には及ばないが、 シェア9.1%で業界2位だ。
同社の賃貸住宅事業は、全国の貸家市場が低迷するなかで、好調に推移している(右図参照)。2010年度の賃貸住宅の売上高は前年度比10.5%増。営業利益では同21.6%増に伸びている。