中国に進出する日系企業にとって、激動の市場で利益を出すための「営業管理」がいかに重要かは、前回述べた通りである。しかし、日本の行動原則に捉われない中国人営業マンの社会で、効率的な管理体制を構築し、彼らを管理することは至難の業だ。日系企業は中国人営業マンとどうコミュニケーションをとるべきか。前回に引き続き、エルバージュ・マネジメントの谷 公爾・主席董事がその秘訣をさらに詳しく語ってくれた。

中国人が重視する「外人」「内人」
一度懐に飛び込めば「しめたもの」

常識が違う中国人営業マン組織でどう戦うか(下)<br />日本流営業管理に巻き込むための「覚悟」と「機転」エルパージュ・マネジメントの谷公爾・主席董事。営業組織力を強化するコンサルティングの経験が豊富。

――常識が異なる中国人営業マンとも、しっかりコミュニケーションを取れば、ちゃんと組織営業ができていくのですね。

 その通りです。この段階で結果が出てくるもう1つの理由が、色々情報を仕入れる活動を通じて、日本人駐在員と中国人営業マンの関係がよくなることです。

 中国人には、「外人」「内人」という考え方があります。自分にとって身内かどうかということです。中国人営業マンにとって日本人は、絶対的に外人なので、こちらから踏み込んでいかない限り、相手からは近づいてくれません。

 営業管理制度を導入するためにコツコツ情報を仕入れる活動を通じて、コミュニケーションの機会が増え、日本人駐在員と中国人営業マンの距離が近づいていきます。ある一定の距離より中に入れれば「しめたもの」で、とたんに協力度合いが変わってくるのです。

 もっと言えば、営業マンの奥さんまで含めた家族付き合いができるといいですね。奥さんも含めて食事ができる関係になると、奥さんの方から「いい会社だから、あんた頑張りなさいよ」と援護射撃をしてくれます。これは世界共通なんじゃないかと思います(笑)。

 また、意外と営業マン自身よりも奥さんの方が人的ネットワークが広い場合も多く、友達や親せきを駆使して潜在顧客を紹介してくれたりするのです。

 日本人でここまで中に入っていくのは大変です。日本人社員同士でカラオケに行ったり、ゴルフに行ったりする暇などなくなります(笑)。でも覚悟を決めてここまで入り込んだら、結果は格段に違ってくるはずです。