長年“空気”のように周囲を気遣い、引きこもってきたという30代男性に取材した。HSPという症状に悩まされる彼には、どんな人間関係が足りなかったのか(写真はイメージです)

空気のような男性が自分を
「引きこもり」だと気付いた瞬間

「引きこもりって、話すのが苦手で、言葉がない。名前が付かないと、自分の存在を表すことさえできないんです」

 長年“空気”のように周囲を気遣いながら生きてきたという地方在住のAさん(30歳代)は、そんな“自分って、いったい何なんだろう”と考え続ける。

「“引きこもり”で検索したら、やっと自分の状態と同じであることがわかった。今、そこに、立ち位置があるみたいですけど……」

 Aさんとは手紙やメールでのやりとりを経て、お会いすることになった。大学を中退後、10年あまり仕事をしていない。

「会うことに矛盾を感じる。家の外で人と会ったらもう引きこもりじゃないし。でも、それで引きこもりじゃなくなるならいいですね」

 待ち合わせした駅の改札口でAさんに声をかけられ、例によってカラオケボックスに入って話を聞いた。

 平日の昼間だというのに、店内は満席状態のようで、隣の部屋からは70~80年代頃に流行った歌謡曲を熱唱する男性の声が、時々聞こえてくる。

 引きこもり傾向のある人は、どちらかというと、他人の気持ちがわかり過ぎてしまうので、気遣いし過ぎて人付き合いに疲れてしまうタイプの人が多い。Aさんも、相手に気を遣っているように見せない気遣いを、身体にインプットしてしまっているという。

「自分も人の気持ちがわかり過ぎる体質。HSP(ハイリ―・センシティブ・パーソン)という診断に近いのかなと思います」