船の給油拠点として輝くシンガポールを、指をくわえて見ているしかなかった日本。しかし国際的な環境規制の強化が決まり、「クリーンなLNGへの燃料シフト」という千載一遇のチャンスが巡ってきた。LNGの輸入大国である日本は、燃料補給の一大拠点としての地位確立を狙っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

 LNG(液化天然ガス)バンカリング拠点の形成促進──。8月末、国土交通省が2018年度予算の概算要求に盛り込んだ一つのメニューに、海運・造船業界が沸き立った。

 LNGバンカリングとは、船にLNGを燃料として補給すること。ある国交省幹部が「日本をLNGの補給ハブに押し上げることは悲願だ」と言い切るように、かねて、国交省では横浜港をモデルケースにLNGバンカリング拠点を整備しようと検討会を進めていた。

 今回盛り込まれた予算の詳細は未定だが、「LNGバンカリング拠点創設に必要な費用の3分の1に補助金が付く」(海運関係者)方向で検討されている。補助金の大盤振る舞いに、海運・造船業界は大きな期待を寄せている。

 これまで、船舶燃料のメーンは「C重油」と呼ばれる硫黄分の濃度が高い油だった。そして、重油の補給拠点として確固たる地位を築いているのはシンガポール港である。

 実際、シンガポール港には船の燃料油の約2割を扱う世界ナンバーワンの実績がある。東西の船が行き交う交通の要衝であるシンガポールは、大規模な製油所を整備して安い重油を用意するなど、地の利を生かした施策を講じてきた。

 対する日本は、地理的には「太平洋航路への玄関口になり得る」(別の海運関係者)利点があるものの、製油所の石油精製技術が高いばかりにそもそも船に多く使われる重油が少ない。さらに精製コストの高さなどの複合的な要因が加わって、重油の供給価格はシンガポールより1割程度も高くなる。

「船の運航コストに占める燃料の構成比は高い。価格が1割も高ければお話にならない」(前出の国交省幹部)。日本の港には、燃料補給拠点としての国際競争力はおよそ期待できなかった。

 ところがここにきて、日本に千載一遇のチャンスが巡ってきた。昨年、国際海事機関が船の燃料に対する環境規制の強化を決定。20年1月に導入される新規制をにらんで、環境負荷の低いLNGを燃料とする船の需要増が見込まれているのだ。