経営 × 人事評価

ヤフーはなぜ6000人の社員を巻き込む
「1on1ミーティング」を続けるのか?

間杉俊彦 [ダイヤモンド社 人材開発編集部副部長]
2017年10月4日
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「ヤフーだからできた」は間違い。仕組み作りが重要

 1on1が定着したのはヤフーがそれに適した企業だからだろう、という声も世の中にはあるが、それは違う、と本間氏は言う。

 2012年当時のヤフーは、隣の席の同僚ともメールでやりとりするような、対話の少ない社内環境にあった。

 経営体制が替わったタイミングでスタートした1on1は、最初から社員に受け入れられ、浸透したわけでは決してなかった。社内には批判もあったし、抵抗もあった。

 そこで、1on1を定着させ、浸透させるために、本間氏をリーダーとする人事部門は、さまざまな仕組みや仕掛けを実践したのである。

 たとえば「1on1チェック」は部下の側に自分が受けた1on1を点数化してもらい、それを上司にアセスメント結果として返す仕組み。これを3カ月に1回、実施する。

 大事なのは点数の高低ではなく、アセスメント結果を振り返りの材料にし、対話のクオリティを上げることだ。

 また、「社内コーチ」の養成も図った。社内コーチはコーチング研修を受けるほか、全員が社外のプロフェッショナルについて、より専門的にコーチングを学ぶ。そして1on1のエバンジェリスト(伝道師)として、やり方に迷う社員の相談役となる。

 1on1をやりっ放しにせず、見える化し、クオリティ向上のための学習やフィードバックを受ける仕組みを備えているのである。

 ヤフーの人材育成の基本方針は「社員の才能と情熱を解き放つ」であり、1on1はそのことを実現させるための要と言うべき施策だ。

 「社員の才能と情熱を解き放つために、上司や職場の仲間から観察してもらい、経験を振り返りながら自分の職業観について考えることが必要です」、と本間氏は言う。

 そのために1on1では目先の業務についてだけではなく、将来的な部下自身のキャリア・ビジョンについても語られる。企業組織である以上、個々のビジョンがその通りに実現されるとは限らないが、先々の目標を思い描き、さらには組織の中で共有することで、今の業務に力を注ぐ。

 少し考えれば明らかだが、将来ビジョンを持たないまま、ただただ目先の業務に追われることと比べれば、どちらが「やる気」になるだろうか。

 1on1ミーティングは、放っておけば常に上から下という一方向になりがちな社内コミュニケーションを双方向にし、誰もが持つポテンシャルをより発揮させて組織にプラスをもたらす、きわめて有効なマネジメント手法であると考えられる。

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間杉俊彦 [ダイヤモンド社 人材開発編集部副部長]

1961年、東京都生まれ。1986年 、早稲田大学第一文学部文芸専修卒業、ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属され、以後、記者として流通、家電、化学・医薬品、運輸サービスなどの各業界を担当。2000年 週刊ダイヤモンド副編集長。2006年 人材開発編集部副部長。著書に『だから若手が辞めていく』(ダイヤモンド社刊)

 


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