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岸博幸のクリエイティブ国富論

参加自体が自己目的化していないか?
TPPを巡る議論の危うさ

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第160回】 2011年10月21日
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 11月のAPEC首脳会合というデッドラインが近づくにつれ、TPPを巡る政府与党内の議論とメディアの報道が盛り上がってきましたが、どうも偏った議論ばかりが横行しています。このままで交渉への参加・不参加が意思決定されて大丈夫なのでしょうか。

配慮すべきは農業だけではない

 TPPに既に参加している9カ国は、11月のAPEC首脳会合で大枠について合意をしようとしています。即ち、日本がTPPの交渉に参加しようと思うならば、そこで参加の意思表示をした方がいいし、米国からも参加の決断を求められています。

 そのため、最近になって急速にTPPに関する政府与党内での議論とメディアの報道が盛んになっているのですが、どうも問題点ばかりが目に付いてしまうと言わざるを得ません。

 最大の問題は、貿易自由化を巡る過去の議論と同様に、“部分均衡”の議論に終始してしまっているということです。TPP参加によって影響を受けるであろう農業などの特定の産業をどうするかの議論ばかりになっているのです。

 もちろん農業についても、日本の農業への影響をいかに最小化するか、TPPを契機に農産品の国内価格維持が主眼であった農政をいかに大転換するか、といった大事な論点はあります。

 今の民主党内での議論は、そうした建設的な議論なしに「農業を守るためにTPP反対」ばかりで、情けない限りではありますが、それ以上に問題と思うのは、日本経済全体を踏まえてTPPにどう対応すべきかという議論が皆無であることです。

 今の日本経済で最大の問題は何でしょうか。東日本大震災の影響ももちろんありますが、それ以上に深刻なのは間違いなくデフレと円高です。デフレはもう15年程度続いており、それが民間部門の将来期待を極端に低下させたので投資も消費も盛り上がりません。円高も異常な水準が続いて、輸出関連の企業や下請けの中小企業の収益を圧迫しています。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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