世界一売ることが難しい商品が「殺し」を売ることができれば、世界一のマーケティング・マネージャーになることができるのではないか――そう考えた天狼院書店店主の三浦崇典氏が発売直前に緊急寄稿してくれた。
いよいよ11月9日に発売となる三浦氏の処女作『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)は、女子大生七海が「受注数世界一の殺しの会社」を創る“本格マーケティング小説”だという。
七海が売る商品は「殺し」であるから、もちろん、「広告」を打つことはできないし、公に「営業」もできない。ましてや「PR」などもってのほかである。
三浦氏が9度の倒産危機に直面したとき、脳裏に浮かんだのは吉祥寺「小ざさ」を描いた『1坪の奇跡』だった。そもそも起業したきっかけが、この本だったからかもしれない。
なぜ、三浦氏は最強マーケティングの答えを、吉祥寺「小ざさ」に求めるのだろうか?

9度の倒産危機に直面!

世界一売ることが難しい「殺し」をどう売るか?<br />「広告」「営業」「PR」不要の<br />最強マーケティングの答えは、<br />日本型マーケティングにあった!三浦崇典(Takanori Miura)
1977年宮城県生まれ。株式会社東京プライズエージェンシー代表取締役。天狼院書店店主。雑誌「READING LIFE」編集長。プロカメラマン。小説家。劇団天狼院主宰。映画『世界で一番美しい死体~天狼院殺人事件~』監督。ライター・編集者。著者エージェント。2016年4月より大正大学表現学部非常勤講師。2017年11月、『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を出版予定。
NHK「おはよう日本」、日本テレビ「モーニングバード」、BS11「ウィークリーニュースONZE」、ラジオ文化放送「くにまるジャパン」、J-WAVE、NHKラジオ、日経新聞、日経MJ、朝日新聞、読売新聞、東京新聞、雑誌『BRUTUS』、雑誌『週刊文春』、雑誌『AERA』、雑誌『日経デザイン』、雑誌『致知』、雑誌『商業界』など掲載多 数。2016年6月には雑誌『AERA』の「現代の肖像」に登場。

 僕は現在、天狼院書店という本屋を経営している。
 2013年9月に1店舗目をオープンした天狼院書店は、今ではスタジオも含めると全国で5店舗を展開し、新たに6店舗目を準備している。

 と言っても、決して順風満帆だったわけではない。
 むしろ、常にピンチの状況が続いていき、正直に言ってしまうと、これまで天狼院書店は少なくとも9度、倒産する危機があった。

 僕に限らず、独立起業当初は、ほとんどの場合、「広告費」を捻出するのも難しいだろう。
 そして、人件費を割くことも難しいので、積極的に「営業」を仕掛けることもできない。ブランド力がないので、「PR」しても費用対効果が薄い。
 実は、起業当初は、ほとんどの場合、「殺し」を売るのとさほど変わらない状況に置かれるのだ。
 つまり、極めて難易度の高い状況で、マーケティングを行わなければならない。

 また、一方で、順調に成長した企業においても、「広告」「営業」「PR」をしなくてもいい状況であれば、まずはそれに関わる「費用」を抑制することができるので、「費用」が減る分だけ、「利益」が増大する。

 また、これは単に資金の話ではなく、「労働工数」の話にもつながる。
「営業」や「PR」には、費用のみならず「労働工数」が費やされる。現在の労働戦力が限られた状況下において、利益を損なうことなく「労働工数」を節約することができれば、理想的な労働環境を構築できる。

「働き方改革」より「マーケティング改革」!?

 つまり、「働き方改革」とともにやるべきなのは、実は、「マーケティング改革」なのだ。

 それを解決するアプローチこそ『殺し屋のマーケティング』である。
 どうすれば、世界一売ることが難しい「殺し」を売ることができるか、を真剣に考えることによって、様々な解決策が見えてくる。
 しかし、本当にそんな方法論が世の中に存在するのだろうか。
 実は、ある。
 しかも、シリコンバレーやヨーロッパに飛ばずとも、ごく近くにその答えはあった

 東京・吉祥寺のダイヤ街に行ったことがある方なら、小さな店舗の前に連なる「行列」を見たことがあるだろう。
 または早朝から並ばないと手に入れることができない「幻の羊羹」のことを、あるいは聞いたことがあるかもしれない。