おきな・ゆり/1960年生まれ。東京都出身。日本総合研究所調査部理事。慶応義塾大学経済学部卒業。同大学院経営管理研究科修士課程修了。日本銀行勤務を経て、現職。

 先週末フランスのカンヌで開かれたG20は、ギリシャの動きに翻弄されたうえ、ユーロ第3の経済大国イタリアまでがIMF(国際通貨基金)の監視受け入れを表明するなど、ユーロ財政危機の対応に追いまくられた。果たして、この危機は乗り越えられるのか。これまでの対応を検証しながら、今後の行方を考えてみたい。

 欧州金融市場の動揺は、今年前半までは周縁国の動揺に止まっていたが、今夏以降イタリアやスペインといったいわゆる欧州コア国の国債金利が上昇、ドイツとの利回り格差が顕著になった(図表1)。欧州各国金融機関にもより大きな影響が及び始め、フランス・ベルギー系のデクシア・グループが実質的に経営破綻し、両国政府の公的支援のもとで分割の上救済された。

 その後、EU全体として欧州金融安定化基金(EFSF)の拡充、投資家によるギリシャ国債の50%の自主的負担、これに対応するための銀行の自己資本引き上げなどの包括的な施策をとりまとめ、11月初旬のG20でもこの包括策への支援を具体化しようとした矢先、緊縮策の強化による国民の不満増大から政治的な不安定性を増したギリシャで、パパンドレウ首相は唐突に国民投票の実施を発表、その結果によっては包括策が瓦解し、大混乱が懸念される事態となり、金融市場が再び不安定化し始める展開となった。