「派遣社員の選考や面接をしてはならないが、会社見学と表現するならば、1回は実施してもよい…」。派遣社員就業には“掟”があり、掟破りの手口も横行している。しかしこの掟も掟破りも、そもそもトンデモな理由から生まれている。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口博)

派遣就業を巡る“掟”を
あの手この手で破る

派遣社員の選考面接は禁止なのに掟破りが横行する理由派遣社員就業では面接は禁止、というルールの裏をかいくぐるために存在するのが「職場見学」。しかし色々なルールがあるため、スケジュール調整に苦労する人事部は少なくない(写真はイメージです)

 派遣社員が就業したり、就業先企業が派遣社員を受け入れたりするにあたっては、トンデモな掟が存在している。「就業先企業は、どの派遣社員に就業してもらうかを選択することができず、従って、派遣社員の選考や面接をすることができない」というものだ。

 このように書くと、違和感を覚える読者が多いに違いない。「自分の会社では、選りすぐって派遣社員を採用している」「受付スタッフは派遣社員だが、明らかに選考しているはずだ」「先日、派遣社員の面接が行われていた」という反応が聞こえてくる。

「派遣社員の選考や面接をすることができない」という掟があるが、「選考や面接をしている」というのが実態である。そう、この掟には、さまざまな抜け道があるのだ。

 就業先企業は派遣社員の選考をすることができないので、派遣社員の履歴書を取り寄せて見ることができない。そのかわりに、「キャリアシート」という名の、派遣社員の氏名や年齢、学歴、過去に就業した企業などの詳細や固有名詞を伏せた資料が、派遣会社から就業先企業へ送付される。就業先企業の人事部は不便ではあるが、固有名詞が伏されたキャリアシートをもとに選考している。

 面接することができないので、「派遣社員の採用面接」という表現をすることができない。その代わりに、「派遣社員の職場見学」という表現が用いられる。

 選考や面接をすることができないので、職場見学(という名の面接)は、一度きりしか実施してはならない。例えば、派遣社員に社長秘書として働いてもらいたい場合、ボスになる社長と人事部長、そして候補の派遣社員の三者が、会えるようにスケジュール調整しなければならない。もしそれができなければ、事前に顔合わせすることがなく就業が開始されたり、逆に見合わせたりする。

 この職場面接のアレンジは結構面倒で、就業先企業の人事部はスケジュール調整に難儀しているものだ。