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まず、個より始めよ――
被災障害者の過酷な現実から考える防災のあるべき姿

災害に強い町づくりを、過疎の町と障害者たちに学ぶ【後編】

みわよしこ [フリーランス・ライター]
2011年11月25日
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 前回、東日本大震災の際、高さ2.7メートルの津波に襲われた北海道・浦河町で「完璧」に津波避難を成し遂げた「浦河べてるの家」の精神障害者たちのエピソードを紹介した。

 それでは、障害者が被災するとはどういうことなのであろうか?

 「障害者」と一口に言っても、障害の程度や内容は人によりさまざまである。まず、比較的想像しやすい身体障害者の実例を紹介しよう。

障害者が被災するということ
――熊篠慶彦氏の体験

熊篠慶彦氏。特定非営利活動法人ノアール理事長。障害者の性のバリアフリー化に関する多様な活動を展開。
Photo by Yoshiko Miwa

 川崎市宮前区在住の熊篠慶彦氏は、特定非営利活動法人ノアールを運営して障害者の性のバリアフリー化に関する活動を行う、極めてアクティブな身体障害者である。生まれつきの脳性麻痺により四肢が不自由なので、電動車椅子を利用している。

 3月11日、熊篠氏は、自宅で外出の準備を始めようとしたところ、地震に襲われた。川崎市は震度5弱であった。熊篠氏の住まいの中では、家具の転倒は起こらなかったが、本棚の本が何冊か落ちたそうだ。

 地震の発生後、川崎市ではすぐに停電が発生した。このことは、熊篠氏が外に出られなくなることを意味した。熊篠氏が外に出るためには、住まいに設置されている電動リフトを利用しなくてはならない。停電すれば、リフトは利用できなくなる。外出に備えて、電動車椅子のバッテリはフル充電状態だったが、それ以前に外に出ることができない。

 熊篠氏は、まず情報を得ようとした。何が起こったのか。電車は動いているのか。停電しているので、パソコンとインターネットは利用できない。非常時に備えて所有していた電池式のラジオで情報を得た。東京の都市圏に大混乱が起こっていることが判明した。熊篠氏は出かける予定を断念した。

 次に熊篠氏が行ったのは、友人知人たちに無事を知らせることだった。出かけるためにフル充電状態にしてあった携帯電話を利用し、Twitterとブログに「無事」と書き込んだ。この後は、電気の供給が復旧するまで携帯電話の電源をオフにしていたそうだ。いざという時の最後の命綱だからである。

 熊篠氏は独居で自立生活を営んでいるが、四肢の不自由な障害者が自立生活を営むにあたっては、数多くの電気機器が必要である。停電のため、それらは全く利用できなくなった。照明も暖房も利用できず、暗く寒い中で、熊篠氏は数多くの問題について思いをめぐらせた。食事はどうすればよいのか。米は買ってあるし、ふだんから、3日分くらいのレトルト食品の備蓄などの危機管理はしている。しかし、水とガスは止まっていないけれども、電気が使えない。ピザや寿司の出前を取ることも考えたが、電話は不通になっていた。結局、その晩は、冷凍庫にあったおにぎりをガスの火で煮込んで食べたそうだ。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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