旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理
【第10回】 2011年12月2日 車 浮代

“海のミルク”と称される栄養の宝庫、
新鮮な「牡蠣」を江戸風にいただく

 牡蠣ほど、世界中で愛されている貝類はないのではないでしょうか?

 古代ローマ時代から養殖が始まっていたそうですが、魚介類の生食文化のなかった欧米でさえ、牡蠣に関しては、好んで生で食べてきました。

 生牡蠣の屋台は冬のフランスの風物詩でもありますし、欧米には多くのオイスターバーがあり、豊富な種類の生牡蠣を、数種類の味付けで食べさせてくれます。

 昨冬、北米を旅した時、何軒かのオイスターバーに案内していただきましたが、どこもみな地元の人々で賑わっていました。

 特に人気は「クマモト・オイスター」と呼ばれる小粒の高級牡蠣で、戦後すぐ、熊本県八代市からアメリカに輸出された牡蠣の子孫だそうです。

 現在はアメリカ西海岸で養殖されているとのこと。

 小さいながらもクリーミーでおいしく、輸出元である日本で見たことがないのが不思議でした。

牡蠣の松前焼
【材料】牡蠣…180g/だし昆布…1枚/醤油…1/2カップ(50ml)/酒…1/2カップ(50ml)
【作り方】①牡蠣はよく洗い、ざるにあげて水気を切り、醤油に漬けておく。②だし昆布を適当な大きさにカットし、酒に浸して柔らかくしたら、1を乗せてオーブンで5分ほど焼く。軽く焼き色がついたらひっくり返して3分程度焼く。③昆布ごと皿に盛る。牡蠣を食べた後は、昆布も割いていただく。

 意外なことに、古代より魚介類の生食にこだわり続けていたにもかかわらず、我が国が産地以外で殻付きの生牡蠣を食べるようになったのは、明治時代以降のことです。

 決して新鮮な牡蠣が獲れなかったわけではありません。

 現在でも、隅田川をクルーズしていると、土手沿いに自然な牡蠣の生息が見られるように、遠浅で豊富な栄養分を含む東京湾では、江戸時代から牡蠣の養殖が始まっていました。

 また大坂では、晩秋になると、広島方面で大量に養殖された牡蠣を積んだ「かき船」が土佐堀、堂島、道頓堀をはじめとする十数か所以上の堀川に停泊し、牡蠣の販売や、船上で牡蠣尽くしの料理をふるまったそうです。

 広島市郷土資料館の「カキ船コーナー」に、天保3年(1832年)、富山の住職・東林が味わったメニュー全8品が再現展示されており、希望者にはレシピがいただけるそうです。

 ラインナップは、酢ガキ・カキの胡麻油炒めおろし大根しょう油添え・カキのからまむし(炒めたおからと和えたもの)・カキのひね生姜煮・カキの吸物・カキと芹の鍋・カキの土手焼き・カキ飯。

 船の上でこれらが味わえるなんて、牡蠣好きにはたまらない贅沢ですね(笑)。

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車 浮代

(くるま・うきよ)

時代小説家。浮世絵と江戸文化に造詣が深い。著書に時代小説『蔦重の教え』(飛鳥新社)、『"さ・し・す・せ・そ"で作る<江戸風>小鉢&おつまみレシピ』(PHP研究所)等がある。国際浮世絵学会会員 日本ペンクラブ会員


旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理

栄養価の高い旬の食材を、あまり手を加えずにいただく――。これが江戸料理の醍醐味であり、健康長寿につながる正しい食のあり方だと思います。このコラムでは、江戸料理と健康をテーマに、食材ごとの情報とレシピをご紹介していきます。

「旬を楽しみ、身体が喜ぶ 江戸料理」

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