財政危機の嵐が吹き荒れる欧米諸国、バブル崩壊が危ぶまれる中国、そして東日本大震災のダメージと円高に苦しむ日本――足もとの世界情勢には、とにかく不安要素が多い。そうした状況を反映して、金融市場も迷走の度合いを強め、多くの投資家は「次の一手」を見つけられずに様子見を続けている。投資家はこれから、何を目安にして動けばよいのか。今回、「伝説の投資家」と呼ばれるジム・ロジャーズ氏に話を聞く機会を得た。

 ロジャーズ氏は、パンローリング株式会社の運営により、去る11月26日に開催された投資業界最大規模のチャリティイベント「日本SAIKOH2011」に招かれて来日した。大盛況のうちに終わった講演の後、単独インタビューに応じてくれた氏は、今後の市場の見通しと自身の戦略について、詳しく語ってくれた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

投資では商品と通貨をロング、
株式をショートと見ている

ジム・ロジャーズ/1942年生まれ。米国アラバマ州出身。エール大学、オックスフォード大学卒業後、ウォール街に就職。73年ジョージ・ソロスと共にクォンタム・ファンドを設立、ファンドマネジャーとして、10年の間に4200%という驚異的なリターンを実現。ウォーレン・バフェットやピーター・リンチと共に、世界三大投資家の1人と呼ばれる。引退後は、98年にRogers International Commodity index(RICI)を設立。二度の世界一周旅行を通じて相場勘に磨きをかけ、株式、債券、通貨、商品などへの投資をグローバルに手がける。成長著しいアジアに魅かれ、現在家族と共にシンガポールに在住。
Photo:Pan Rolling

――ソブリンリスクに苦しむ欧米諸国や、東日本大震災に見舞われた日本をはじめ、世界の主要国は不安を抱えている。そうした状況を反映して、金融市場は迷走の度合いを強めている。ロジャーズ氏は、足もとの世界経済や金融市場の動向を、どう見ているか。

 2012年も、世界経済は問題を抱えながら進む。このままだと、事態はますます悪化するのではないか。

 私はこうした状況を見据え、投資に関して商品と通貨をロングポジション、下落傾向が顕著な株式についてはショートポジションをとっている。今最も有望なのは、やはり商品市場だ。商品は堅調な展開が続くと見る。

――商品は、ロジャーズ氏が以前から注目している市場だ。新興国の需要増によって資源・食糧の需給逼迫が続き、商品価格は軒並み上昇基調にある。先行きはどうなるだろうか。