ついにユーロ圏で最も信用があるドイツ国債までもが売られ始めた。投資家はドイツにかかる欧州財政危機関連の財政負担を嫌気しているのだ。日米欧の中央銀行はドル資金供給の拡充策を打ち出したが、これは金融機関の資金繰り対策にすぎず、財政危機の解消策とはなりえない。

11月24日の独仏伊首脳会談でメルケル・ドイツ首相(左)はユーロ共同債にこれまでどおり反対の姿勢を貫いた。しかし、ユーロ存続のためにはいずれ共同債発行を決断するしかない
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 欧州財政危機に端を発する金融システム不安への強い危機感が先進国の中央銀行を突き動かした。

 11月30日、日米欧の6ヵ国の中央銀行はFRB(米連邦準備制度理事会)とのドルスワップ(自国通貨とドルとの交換)協定の金利を0.5%引き下げ、期限を半年延長し、2013年2月1日までとする協調策を発表した。

 これはギリシャ、イタリアなど重債務国の値下がりしている国債を大量に保有する欧州の金融機関が、信用低下からドル資金調達に支障を来していることへの対策だ。

 調達コストの指標であるドルのLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)3ヵ月物金利は、7月には0.25%前後だったが、11月22日以降0.5%超えで推移していた。そこで、ドル資金をより低利で供給できるようスワップの金利を引き下げたのだ。市場も好感し、欧米の株価は急上昇した。

 ただ、これで欧州の財政危機が収束するわけではない。今回の協調策は金融機関の資金繰り対策、金融危機への波及の予防策ではあるものの、財政危機の主因であるユーロ圏の重債務国の財政を改善するものではないからだ。

最後の砦
ドイツ国債の利回りが上昇

 むしろ、収束どころか欧州の財政危機は正念場を迎えつつある。これまで他の主要国の国債利回りが上昇(価格は下落)しても低下基調が続いていた、ドイツ国債利回りまでもが上昇し始めたのだ。

 そのきっかけは11月23日の10年物国債入札の大幅な札割れ(募集予定額を応募額が下回ること)。60億ユーロの募集額に対し、39億ユーロしか応募がなかったのだ。