アジア最大のローコストキャリア(LCC。格安航空会社)であるマレーシアのエアアジアが日本市場を狙って路線を拡大している。昨年12月に羽田空港に就航した「エアアジアX」は、この11月に関西国際空港へも就航。それも、関空~クアラルンプールを週4便、正規料金で片道1万4000円からという、インパクトある低価格と規模でもっての参入である。今後は、札幌や福岡など1年に1都市ずつ就航地を増やすという。ある航空関係者は、「日本でLCC機運が盛り上がってきたが、エアアジアは規模、知名度共に大きく、いよいよ本命が来た」と受け止めている。
アジア市場を制覇したいエアアジアにとり、日本は言語や立地などで「独特だが重要な市場」(アズラン・オスマンラニ・エアアジアX CEO)。徹底したリサーチが必要だったが、「参入したら大規模に展開する」(同)と鼻息は荒い。
エアアジアは、1座席を1キロメートル運ぶユニットコストが3円(ANAの4分の1)という驚異的なコスト競争力で高い成長を続けており、現在、世界の航空業界で最も勢いのある1社だ。
だが、懸念がないわけではない。一つは、LCCになじみのない日本で低価格戦略がどれだけ受け入れられるかは未知数であること。もう一つが、今年ANAと立ち上げた「エアアジア・ジャパン」が、国内線のみならず国際線に意欲を持っていることだ。将来的にグループ内競合の心配を残したままだ。
派手な演出やキャンペーン価格で目を引くだけでなく、日本人客の恒常的な獲得に成功してこそ、真のLCC王者となりうるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)