海外から持ち込まれるカタカナの経営用語。「ソーシャルビジネス」も最初はそういう捉えられ方をしていた。海外のビジネススクールで取り上げられはじめたときにも、多くの経営者やビジネスパーソンは、「改めて欧米風に言われなくても、日本企業の多くは社会的な課題や顧客の課題を解決してきた、それがビジネスだ」という反応をしたようだ。

つちや しの/国際協力NGO勤務後、2006年東京大学大学院総合文化研究科修了、日本総合研究所創発戦略センター入社。環境事業立案、環境・社会的投資に従事後、多国籍企業の途上国におけるソーシャルビジネス研究を本格化。2009年よりイギリスに移り、世界中のプロジェクトを担当し、国際的に研究を続ける。「BOPビジネス入門―パートナーシップで世界の貧困に挑む」共著(中央経済社)他。

 日本企業の多くは社是で社会への貢献を謳い、陰ながらに社会を支えて来たと自負する。それは事実であり、日本の成長を支え、地域社会の礎を創ったのも中小から大企業に至るまでの数多くの企業活動であった。企業の城下町も、労働者や地域の人々の抱えるニーズを満たすため、企業はさまざまな形で商品・サービス・雇用機会を提供して成立した。日本企業にすれば、「これを社会的(ソーシャル)と言わずして、何というのか」という思いも強いだろう。

イノベーションの価値に
焦点を当てる

 だが昨今話題になる「ソーシャルビジネス」が内包する要素は、「地域社会やコミュニティが抱える社会的課題を、ビジネス的手法で解決する」という面だけではない。日本では、社会的課題を取り扱うというミッション性が前面に押し出されているため、あまり注目されていないが、「(社会的)構造を根本的に変える」という、ビジネスモデル・イノベーションの価値が重要である。