会社を子供に継がせるなら「まず現場で3年」が最低条件だ写真はイメージです

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

後継者不足で650万人の雇用が失われる!?

 帝国データバンクが2017年に行った調査によると、国内企業の66.5%、つまり「3社に2社」が社長の後継者不在に悩んでいる。しかもその率は前年から0.4%増加しているという。

 売上規模別では1億円未満の企業で78.0%と突出しており、中小企業、とくに小規模企業における後継者問題が深刻であることがわかる。

 中小企業では家業として子どもに会社を継がせるケースが多い。だが、少子化で後継者候補がとなる子どもがそもそも減ってきている。また、職業の選択肢が多様になってきていることも大きい。

 後継者がいなければ、廃業に追い込まれることもある。

 経済産業省は、中小企業の後継者問題等による廃業の増加により、2025年頃までに約650万人の雇用が失われると推計している。これは約22兆円のGDP損失にあたる。

 もしこの推計が正しければ、これだけの雇用を復活させ、GDP損失を補うのは並大抵のことではない。それよりも後継者不足の解消を考える方が合理的だろう。

 本書『「後継者」という生き方』は、著者の牟田太陽(むた・たいよう)氏が、自身の経験や顧客の事例を踏まえ、事業承継を成功させるのに必要な考え方や行動指針を、主に継ぐ側の立場からまとめたものだ。