古から今も変わらず慣習、習慣を受け継ぎながら、流々とした時を刻む町京都祇園。時代を超えて私たち日本人の心を惹きつける「粋の文化」を祇園に入り浸る著者が「かっこいいおとな」になるために紡ぐエッセイ。第14回は、独特な世界観が残る花街の始業式についてお届けいたします。(作家 徳力龍之介)

変わらないことの大切さを教えてくれる花街

撮影/福森クニヒロ

 始業式と聞くと、何故か懐かしい響きがあります。小中高と年度の初めや春夏冬の休み明けには必ず始業式があり、式というだけで何故か緊張感があったような思いが記憶の彼方にあるのです。

 花街でも年の初めに始業式が執り行われます。祇園甲部では、毎年一月七日に行われる大切な行事なのです。伝統技芸を習う、れっきとした学校法人八坂女紅場学園、祇園女子技芸学校なるものがあり、ここを中心にして花街関係者が一堂に会した始業式が催されるのです。

 芸舞妓衆、地方衆とこの日は黒の紋付を着ます。年配の芸妓衆は紋の付いた着物を着て、正装での参加が決められています。一般には公開されておらず花街関係者だけの参加なのですが、いったい今がいつの時代なのかと錯覚を起こすぐらい、着物姿が勢ぞろいした光景は圧巻です。

 年に一度の新年を期した始業式ですが、精勤賞や技芸に対する受賞、成人式を迎える者にもお祝いがあります。舞のお家元である井上八千代師の舞が出され、花街らしい始業式となり、壇上には八坂神社さんが祀られ、順に手を合わせ、お神酒をいただいてこの一年の技芸に対する誓いをするのです。