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アスパラガスを食べた後のおしっこのニオイがわかる人・わからない人

井手ゆきえ [医学ライター]
【第372回】

 英国医師会誌は毎年、クリスマス号にユーモラスな研究を掲載する。2016年の文献を紹介しよう。お題は「アスパラガス問題」である。

 日本人にはピンとこないが、アスパラガスを食べた後は尿の臭いが強烈な悪臭に変わるらしい。ところが、その悪臭を感じる人と感じない人がいる。それどころか、フランスの作家、マルセル・プルーストはアスパラガスについて「おとぎ話のように、私の粗末な尿瓶を香水瓶に変える」と書いている。マドレーヌ効果ならぬアスパラガス効果で、尿の臭いが香水のように変化する、というのだ。

 さて、このアスパラガス問題、「臭い」「臭くない」と1890年代から議論が続いていたが、21世紀に入りようやく結論がでた。

 米ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームは、6909人の成人男女に対し「アスパラガスを食べた後の自分の尿は、独特な臭いがするか」と質問。「とてもそう思う」と回答した人を「アスパラガス尿を嗅ぎ分けられる人」に、その他の回答者は全て「アスパラガス嗅覚障害」と分類した。

 当然だが、「私はアスパラガスを食べない」という人は、最初から除外している。

 その結果、男性の58%と女性の61.5%が「アスパラガス嗅覚障害」の持ち主だと判明した。およそ5人に3人はこの嗅覚障害を持っている計算になる。プルースト氏は世にもまれな変異の持ち主、ということになるだろう。

 この多数派の遺伝子変異を探索した結果、臭いを感知する細胞の遺伝子に871カ所の小さな変異が発見された。身もふたもないが、アスパラガス問題の結論は「遺伝的に臭いを感知できない人がいる」というわけ。

 アスパラガスは昔から好まれた食材で、ローマ時代の料理書「アピシウス」にレシピが残っている。研究者は「せっかくの祝日だから、アスパラガス料理を作り親しい人と“臭い議論”を楽しんだらどうだろう」としている。

 ただし「勝負デート」を目論んでいる方は、お相手がプルースト氏ではない限り、止したほうがよさそうではある。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

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井手ゆきえ [医学ライター]

医学ライター。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会正会員。証券、IT関連の業界紙編集記者を経て、なぜか医学、生命科学分野に魅せられ、ここを安住の地と定める。ナラティブ(物語)とサイエンスの融合をこころざし、2006年よりフリーランス。一般向けにネット媒体、週刊/月刊誌、そのほか医療者向け媒体にて執筆中。生命体の秩序だった静謐さにくらべ人間は埒もないと嘆息しつつ、ひまさえあれば、医学雑誌と時代小説に読み耽っている。

 


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