社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を、本書から編集・抜粋して紹介します。

【「やりたいことがない」人におすすめ!】「人間」をより深く知るために学んでおきたい3つのジャンルPhoto: Adobe Stock

知っていると、世界の解像度があがる「2つの仕組み」

 本書では、「やりたいことがない人」が無理に目標を見つけなくても自然に道が見えてくるための最初のステップとして、「世界を広げる」ことをすすめています。そして世界を広げるにはまず、世界の仕組みを知ってから動き出すのが大事。じゃあ、世界の仕組みを知るにはどんなことを勉強すればいいのでしょう。

 大きくは「人間の仕組み」と「お金の仕組み」です。ここでは「人間の仕組み」を知るために、学んでおくとよい具体的なジャンルをお伝えします。

1 「心理学」を学ぶと、自分や他人の感情や行動が理解しやすくなる

 心というものは、形もなければどこにあるかもわからない、つかみどころのないものです。そして、物心つかないうちから形成されてきた自分の心の特徴を客観的に知るのは難しいもの。

 でも、心理学を学んで人の心の仕組みがわかると、なぜ自分がこういう行動をとるのか、なぜこういう感情が湧くのかを理解することができ、自分のコミュニケーションの癖を知るのにも役に立つのです。

 心理学には様々な種類があるので、自分に合ったアプローチで「心の仕組み」を学べるものを選ぶのがおすすめです。さらに、心理学ジャンルではないが、行動経済学を学ぶと、「人は、必ずしも合理的な判断をするわけではない」という心の仕組みがわかるようになります。理性的な人ほど自分は合理的な判断をしていると思い込みがちなので、この仕組みを知ることによって、冷静に事実を踏まえた判断ができるようになるでしょう。

 私が学んだ「クリフトンストレングス」も、ポジティブ心理学に関連するもので、人の「強み」の仕組みを知るのには非常におすすめです。

2 「宗教」を学ぶと、世界中の多様な価値観を知る手がかりとなる

 宗教は、人々の価値観や善悪の判断に大きな影響を与えるもの。自分は無宗教だと思っている人でも、食事の際に「いただきます」「ごちそうさま」と言う人は多いが、この言葉にも、自然の恵みを大切にして感謝する日本の宗教観が表れています。

 違う国の人と話をするとき、その国に広く信仰されている宗教を知っておくことで、その国の人達が何を大事にして、何に嫌悪感を抱くのかが想像しやすくなります。信じる教えの内容は、人生において何を選択するかという価値基準に影響を与えているからです。

 様々な宗教を知ることは、世界中の多様な価値観や行動様式を理解する手がかりとなります。
どれが正しいかではなく、そういう考え方もこの世にはあるんだ、というフラットな目線で様々な宗教の考え方を知ることが大事です。

 宗教を学ぶときのポイントは、各宗教の言い伝えなどが客観的にまとめられた「物語」を読むこと。宗教団体が出しているものよりも、宗教色がなく物語性の強いもののほうが、過剰な思い入れがなく読みやすいと思います

3 「ビジネス実務法務検定」で実生活上の法律の知識を身に付ける

法律」はその国で暮らす人の社会の仕組みそのもの。ビジネス実務法務検定は、ビジネスに絡む法律の知識を広く浅く学べる資格試験です。

 自分でビジネスを起こす予定がない人でも、消費者として日々誰かのビジネスのサービスを受けていますよね。その際に関わってくる法律、例えば、民法、商法、会社法、労働基準法、個人情報保護法等々を知っていることで、不当な扱いを受けたり、逆に自分が不当な要求をしたりするのを避けることができます。

 一つひとつの法律に対して詳細な知識がなくても、どのような内容の法律があるかをなんとなく知っているだけでも、「これはおかしいのでは?」と気がつくことができるようになります。人の仕組みというより、社会の仕組みではありますが、日本社会が何に基づいて動いているのかを、広く網羅的に知るために有用です。

「歴史」や「身体の仕組み」も、よりよく生きるために必要

 歴史を知ることは、現代の問題の本質を理解する助けになります。今起こっている問題の多くは歴史的な文脈を知ることで、より深い理解が可能に。歴史を知ることは「今」を相対化する力になります。

 また、人の身体の仕組みを知ることも、より良く生きるための基礎となります。私たちは常に、身体という「器」を通して人生を経験しているので、その器の仕組みを理解することは、人生をより豊かに、より健康に生きることに直結するはずです。

*本記事は、しずかみちこ著『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。