どうすれば外国語を10年、20年と記憶に残すことができるのか?あの中野信子氏が絶賛した話題の新刊『脳が認める外国語勉強法』には、ヒトの記憶の特性を最大限活用し、一度覚えたら単語も文法も忘れなくなる方法を紹介している。特別に一部を無料で公開する。

翌日には7割も忘れている脳

 せっかく覚えたことも、忘れてしまってはどうにもならない。「忘れること」は外国語学習にとって最大の敵だ。忘れるということについての理解が進んだ背景には、ドイツ人心理学者のヘルマン・エビングハウスの功績がある。

 彼は無意味な音節(Guf、Ril、Zhik、Nish、Mip、Poffなど)のリストを覚えるという作業に何年も費やした。音節を覚えるまでにかかった時間とそれを忘れるまでの時間、再度覚え直してから忘れるまでにかかった時間を比較して記録したのだ。

 そうして完成した「忘却曲線」は、彼の執念とマゾヒズムのたまものであり、実験心理学がもたらした偉業と呼ぶに値する(図表1)。この曲線は、人の忘れやすさと、一度忘れたあとに思いだせる割合を表している。エビングハウスが一度覚えた音節の痕跡は、生涯彼のなかから消えることはなかった。

図表1 翌日には7割も忘れている!
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 曲線の左側に注目してもらいたい。私たちの記憶は、耳に入ったそばから網を抜ける水のようにこぼれていく。網が乾くことはなく、電話番号や会ったばかりの人の名前、新たに覚えた外国語など、何かを記憶にとどめようとしても、翌日に覚えているのは30%程度にすぎないようだ。

丸暗記を繰り返しても
記憶には残らない

 もっとしっかりと記憶にとどめられるようにはならないのか?人間の本質は働きものだ。だから、学校の試験や社会生活を切り抜けることができる。新たにエドワードという名の人と知り合ったとき、普通はその名前を丸暗記しようとして、覚えるまで何度も頭のなかで繰り返し唱える。

 絶対にその名前を覚えないといけない場合(エドワードが新しい上司である場合など)は、うんざりするまで繰り返す。こうした余分な作業をすれば、格段に名前を思いだしやすくなる。ただし、それも数週間程度の話だ。

 余分に繰り返す作業は「過剰学習」と呼ばれる。この作業は、長期記憶の形成には何の役にも立たない。最後に受けたテストのために頭に詰め込んだ知識から、今でも思いだせることが1つでもあるだろうか?テスト問題まで思いだせる、という人がいるだろうか?

 外国語の学習に自分の時間を投資するなら、何ヵ月、何年、いや何十年と覚えていたい。労力を増やせば増やしただけ、覚えていられる時間が長くなるわけではない。ならば、最低限の労力で長く覚えていられることを目指そうではないか

まとめ
・丸暗記は退屈な作業であり、いくら繰り返しても長く覚えていられるようにはならない。
・それならば、ラクな道を歩んだほうがいい。新しい単語の概念を学習し、何も見ずに唱えられるようになったらそこでやめる。「ラク」というと聞こえは悪いが、その意味は「効率的」と同じだ。