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出口治明の提言:日本の優先順位

高度成長期の残影にとらわれていると、
何も始まらない

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第33回】 2012年1月17日
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 第2次世界大戦後の混乱が一段落して日本が国際連合に加盟した1956年度から、バブル経済のピークとされる1990年度まで、日本の実質GDP成長率は、年率で6.7%(単純平均)の伸びを示した。前半の17年がいわゆる高度成長期で、年率9.1%の伸び、後半の17年が安定成長期と言われているが、それでも年率で4.2%の伸びを示している。

 これに対して、「失われた20年」と呼ばれることの多いバブル後の91年度から2010年度までの実質GDP成長率は、わずか0.9%でしかない。わが国の経済は、数字から見れば明らかに低成長期に入っている。それにもかかわらず、人々の意識や経済運営の基本的な枠組みは、高度成長期のそれと大きく変わっていないのではないか。このギャップが、わが国の抱えているさまざまな課題の背景に大きく横たわっていると思われる。

2012年度は、極論すれば高成長ではないか

 日本経済新聞の新年恒例の経営者アンケートによると(2012年1月3日)、2012年度のわが国の実質GDP成長率は平均1.8%程度と見込まれている。「経済は回復過程にあるが、その足取りは緩やか」といった経営者のコメントがほぼ一様に掲載されている。

 しかし、この20年間の平均が0.9%であったことを考えれば、その倍に当たる1.8%成長は、極論すれば高成長と言ってもいいのではないか。こうしたコメントの背景には、「わが国経済の常態は、90年度までの6.7%成長、悪くても安定成長期の4.2%成長」といった高度成長期の常識が脳裏に残っているからではないか。

 そう言えば、私たちが日ごろ無意識的に使っている「不況」や「不景気」という言葉の裏にも、こうした高度成長期の残影が刷り込まれているのではないか。つまり、何を基準として、「不況」や「不景気」という言葉を使っているのか、ということだ。

 むしろ、これからのわが国の経済社会を考えるうえでは、この20年間の実績値である0.9%成長をベースとして(すなわち、0.9%成長をわが国の常態として)、虚心坦懐に物事を考えていく必要があるのではないか。なお誤解のないように付言すれば、筆者は成長論者である。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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