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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

日本人の能天気さはギリシャに匹敵
国家財政の破綻は、ある日突然起こる

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第53回】 2012年1月19日
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 ようやく2011年が去った。景気が悪い上に大震災。その上原発。踏んだり蹴ったりの一年だった。2012年は何とか良い年にしたい。特に年初には明るい記事を書きたい。だが考えれば考えるほど難しい。むしろ不吉な予感がする。2012年は日本国破綻の年になるかもしれない。

 先日、日系大手証券のニューヨーク・オフィスで国債の売買をやっている部長さんからトレーディングの現場の状況を聞く機会があった。一日に数十回、数百回の売買を行うトレーダー達は、その瞬間瞬間の相場観で売買を行う。その日に発表される経済指標が「自分の相場観」より良ければ売りに走り、悪ければ買いに走る。たとえば、自分はアメリカの失業率の数字が8.7%と予想していたのに、8.5%であれば売りに動くし8.9%であれば買いに走る。経済指標の好転→株価上昇→金利上昇と連想するからだ。

 皆が買いに走って価格が高くなりすぎたと見れば、売ってポジションをスクエア(買いのポジションと売りのポジションを同額にすること)に戻す。こういうことを一日に何回も繰り返す。彼らにとって関心があるのは、売買で儲けることだけだ。ギリシャの国債が危ないとなれば徹底的に売り込むし、EUの首脳がギリシャの救済がありうると示唆すると買い戻す。そこにはマクロ経済云々と言った理論が入り込む余地がない。彼らは単なる「相場師」である。

 筆者は質問をした。日本国債が先物取引やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のようなデリバティブ(金融派生商品)を使って、突然売り込まれることがあるのかと。それは「ありうる」との回答だった。「今は欧州危機に目を奪われているが、これが終焉したら目が日本に向くかもしれない」と。

 GDPに対する国家債務の比率(IMF資料、2010年時点) は、日本が220%、ギリシャが142%、イタリアが119%、米国が94%と日本がダントツの一番である。日本がいまだに標的にされていないのは、利回りが低いにもかかわらず国内の買い圧力が高いためと、減少傾向にあるとはいえ経常収支がまだ黒字だからだ。だが状況が変わり「日本国債は危ない」という相場観を持たれてしまうと、一気に売り込まれる。国債の価格は暴落し、金利は跳ね上がる。

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安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ


シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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