
60歳前後、子育てが一段落、会社は定年退職といったタイミングで夫婦が別れる、「熟年離婚」が増えています。離婚の理由はさまざまですが、中には「金銭感覚の不一致」が原因、という場合も……。今回は、「夫が稼いだお金は自分のお金」と、ある趣味にお金を使うようになった結果、困った事態になっている女性の相談をご紹介します。(家計再生コンサルタント 横山光昭)
60歳前後での離婚~熟年離婚の引き金を引くきっかけとは?
ここ数年、60歳前後で離婚を選ぶ夫婦が増えているように感じます。いわゆる“熟年離婚”ですが、原因は単なる性格の不一致や介護への不安だけではなく、長年にわたって積み重なってきた「お金に関する価値観のズレ」が引き金になるケースも少なくありません。
価値観のズレは、どの世代の夫婦にも起こり得ます。ただ、現在50代後半から60代の女性たちに特有の傾向として、「夫が稼いだお金=家族のためのお金=自分(妻)のお金」と自然に思ってしまう価値観が根強いように感じます。
もちろん、すべての人がそうだというわけではありません。ですが、専業主婦やパート勤務という形が一般的だった時代背景のもと、家計の軸を夫の収入に置き、自分がそのお金を管理することが「自分(妻)のため」と信じてきた人は少なくないはずです。
とはいえ、家庭内でお金についての風通しがよく、お互いの使い方や考え方に納得できている夫婦は、あまり問題は起きません。しかし、そうでない夫婦は、知らず知らずのうちにズレが広がり、やがて取り返しのつかない距離になってしまうこともあるのです。
今回紹介するTさん夫婦の事例は、まさにその“お金に関する感覚のズレ”が長年にわたって蓄積した末に、熟年離婚に至ったケースでした。