今年9月末に全店舗を閉鎖、営業を終了する「えびす製菓」の閉店のお知らせ今年9月末に全店舗を閉鎖、営業を終了する「えびす製菓」の閉店のお知らせ(撮影:帝国データバンク)

今年に入って和菓子や洋菓子、せんべいなどを自社で製造し店頭販売する菓子製造小売事業者の倒産が過去最多となるペースで発生している。なぜ経営に苦しむ事業者が増えているのか。最新データ、および、大型倒産の事例から、その厳しい現状を解説する。(帝国データバンク 情報統括部 情報取材課長 阿部成伸)

菓子製造小売事業者の倒産が
過去最多のペースで推移

 帰省先へのおみやげや職場へのおみやげで菓子店を利用する機会が増える夏休み。しかし、今年に入って和菓子や洋菓子、せんべいなどを自社で製造し店頭販売する菓子製造小売事業者の倒産が過去最多となるペースで発生している。

 2025年の同事業者の倒産(法的整理かつ負債1000万円以上)は、1月~7月で39件発生。このままのペースで推移すると年間件数は70件ほどとなり、過去最多となっている2019年(49件)を大きく上回る見通しだ。

 39件の倒産を分析すると、法人が27件、個人事業者が12件で、業態別では洋菓子店が25件、和菓子店が13件、その他1件となったほか、負債1億円未満の小規模倒産が31件、態様別では39件すべてが破産となった。

 また、都道府県別では、大阪、福岡(各5件)、青森、東京、愛知(各3件)などで多く発生し、業歴別では30年以上が14件、10年未満が16件と両極端な傾向が見られた。背景には和菓子店では業歴の比較的長い倒産、洋菓子店では業歴の短い倒産が多いことがある。

 負債額が5億円以上となったのは以下の2社。

(株)お菓子のみやきん(青森県七戸町)

 1861年(文久元年)創業、1978年(昭和53年)に法人改組された。長らく、和菓子の製造小売りを手がけ、特に天皇陛下にも献上された「駒饅頭」は全国菓子大博覧会で名誉大賞を受賞した銘菓として地元でも浸透していた。

 平成に入ると、ケーキやアップルパイなど洋菓子を拡充するとともに大手ショッピングセンター内への出店を加速して八戸市や十和田市内などに7店舗を展開していた。2018年には分散していた工場を集約して新工場を完成、青森県外や海外販売も見据えた増産体制を構築し、ピーク時の年売上高は約5億円を超えていた。