専門家や公的機関の立ち会いがない環境で作成した場合、遺言書を法的に有効にするためには、家庭裁判所に一度提出する必要があるので、それまでは勝手に開封してはいけない旨も封筒に明記しておくとよいだろう。

 しかし、遺言書だけでは、諍いの芽を全て摘み取れるとは限らない。遺産分割協議の場は遺言書で乗り切れたとしても、その内容に不満があれば、その後も相続人の間にしこりが残ってしまう可能性があるからだ。

 そこで従来の遺言書に加え、「付言事項」として、相続人それぞれに対する思いを書いた手紙も添えておくことを勧めたい。遺産と一口に言っても、その形態はさまざまで、単純に均等分割できるものではなく、どうしても、特定の誰かに多く配分することになるケースが多いからだ。「家業を継いでもらった」「介護してもらった」などの理由で、この子には多めに残したいということもあるだろう。

借金であっても立派な財産
安易な相続放棄は迷惑

 その場合、遺言書には、遺産の分割が均等でない事実のみが無機的に記載されるため、どうしても取り分の少ない相続人が不満をためやすくなってしまう。

 そこで、相続人それぞれに対する思いをしたためた手紙もぜひ残しておこう。心のこもった故人の手紙を読めば、納得せざるを得なくなるのが人情というものだ。

「遺言書だけでなく、手紙も書くなんて面倒くさい。いっそのこと生きているうちに財産を使い切って遺産をゼロにすればよい」と思った人もいるかもしれない。しかし、人間いつ死ぬか誰にも分からない。生きている限りお金も住む所も、家財道具も必要だ。

「じゃあ借金すれば誰も継ぎたがらないし、放棄してもらえば万事解決!」ともいかない。借金も立派な遺産。子どもが放棄しても、次の相続人に権利が移り、その人が放棄すれば、またその次……という法律の仕組みになっており、通常の相続よりさらに多くの人に迷惑を掛けることになる。意図的にやるのは絶対NGだ。