ここ数年、テクノロジー業界関係者の間でフツフツと関心が高まっているのが、「3Dプリンター」である。
3Dプリンターとは、いったい何かと思われるだろう。その名の通り、これを利用すると、まるでプリントアウトするような簡便さで、3D、つまり立体物が出来上がるような機械のことである。
3Dプリンターの技術にはいろいろあるが、おおまかに言ってしまうと、インクジェットのような技術で、樹脂の極細粉末を噴き出し、それを層状に重ねていくことで立体的なモノに作り上げてしまうものだ。極細粉末は固着する性質を持っていて、層状に重ねて噴出していっても、最後にはひとつのまとまりになる。コンピュータにある3Dデータを利用すれば、望んだかたちそのままにモノができるのだ。
この3Dプリンターは、最初は工業デザインや建築用の模型を作るのに便利な道具として注目された。それまでは図面やデータを模型メーカーに渡して依頼し、出来上がるまでに何日もかかった模型が、3Dプリンターを使えば、その場で見ている間に出来上がってしまう。アメリカの製品開発現場では、「ラピッド・プロトタイピング」と言って、何度も模型を作りながら開発を進めていく手法が主流になっているのだが、そのためにも3Dプリンターは大変重宝する。だが、出てきた当時は、何百万円もする大装置だった。
ところが、最近は、10万円程度で手に入る組み立て式の3Dプリンターまで登場している。数年の間に開発がどんどん進み、もの作りをしたい人の手に入りやすくなったのだ。さて、これが何を意味するのか。
実は、3Dプリンターは「マイクロ製造」の時代にはなくてはならないものだと言われている。
今まで何かを大量に製造しようとすれば、どんなに小さなものでも工場、製造機械、工員が必要だった。プラスティックならば、成型の金型作りにまず高価なコストがかかり、さらにプラスティック注入の機械も必要。大げさな資金と現場がなければ、何もできなかったのだ。