ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

消費増税議論(その5)
財務省・税制調査会・厚労省が無視した
会計検査院の医師優遇税制見直し

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第20回】 2012年2月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 前回、「国民が社会保障・税一体改革を受け入れるためには、財源捻出のための行財政改革と並んで、(財源はそれほど出ないものの)国民からの信頼を勝ち得るような行財政改革をする必要がある。その際のキーワードは、既得権益への優遇をなくすことである」という内容のことを書いた。

 今回はその1回目として、わが国最強の圧力団体で既得権益を持つ医師会と、社会保険診療報酬優遇税制の話である。

医師優遇税制の中身

 わが国の税制は、医療機関に対して、社会保険診療報酬の所得計算に大きな税制優遇(いわゆる「医師優遇税制」)を与えている。医療機関については、事業税にも優遇措置が与えられている。

 医師や歯科医師で、社会保険診療報酬が5000万円以下の場合、その所得税の計算に当たって、必要経費の額を、実際に使った必要経費に代えて、概算経費の額とすることができる。

 たとえば診療報酬が2500万円以下の場合には、実額の経費が50%しかかからなくても、72%の概算経費の控除を受けることができる。そしてこのような概算経費の優遇税制は、概算経費率を縮小しながら、5000万円の診療報酬まで続くのである。

 大きな問題は、実際の経費をもとに納税することも可能だという点にある。診療報酬から実際にかかった経費を差し引いた額が、概算控除で計算した場合より少ない(つまり課税所得が少ない)場合には、「少ない方で計算できる」のである。

 この制度が昭和29(1954)年に暫定制度として導入された時の理由は、「小規模な開業医や医療法人は、納税事務が多いと医療業務に支障が生じる」というものであったが、今やコンピューターの発達の下で、本来の趣旨を離れた単なる優遇制度となっている。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧