2010年1月19日に、日本航空(JAL)が会社更生法を申請し、実質的に倒産してから、丸2年がたった。この2月には稲盛和夫会長が代表権のない会長に退き、大西賢(まさる)社長が会長に、植木義晴専務が社長に就任して、JAL生え抜きのリーダーを中心とする経営体制に移行する。

 再建はおおかたの予想を上回るペースで進み、再建初年度に当たる2010年度の営業利益は、更生計画の641億円を1200億円以上も上回る1884億円を達成した。昨年3月には更生手続きも終了。2011年度も、東日本大震災という逆風を乗り越え、第3四半期までの累計(11年4月~12月)で1616億円の営業利益を確保、営業利益目標も再度修正し1800億円に引き上げた。12年度中の株式再上場も射程距離に入っている。

 JAL再建に当たって、政府と企業再建支援機構から懇願され、その切り札として同社の会長に就任したのが、稲盛和夫だった。周知のように、稲盛は一代にして京セラを世界的なメーカーに育て上げたほか、DDI(現KDDI)も創業した、現代の日本を代表する経営者の一人だ。

 もちろん、企業再建支援機構から3500億円もの出資を受け、5200億円強にものぼる債務放棄(借金の棒引き)を受けるなど、破綻企業としては破格の支援を受けていることは確かであるが、それは取りも直さず失敗の許されない再建、ということでもある。

 破綻前のJALは、親方日の丸的体質による危機感の欠如、経営陣と八つもある労働組合と複雑な関係に起因する一体感の欠如、政治とのもたれ合い、およそ経営不振会社とは思えぬ社員の高給と高コスト体質などなど、経営破たん会社のショーウインドウ的様相を呈していた。

 稲盛は、新体制を発表した記者会見で、「どのような企業の経営でも社員の意識を高めるためのフィロソフィと採算意識を高める部門別採算制度、つまりアメーバ経営を導入すれば必ず成功できるはずだと確信して臨みました」と、述べている。

 稲盛経営は、もつれた糸のごとく利害関係の錯綜するJALに、いかに浸透しつつあるのか。そして、JALの人々は、倒産をどう受け止め、どのような思いを抱きながら、企業再建に取り組んでいるのか。トップ層から現場の従業員に至るまで、インタビューを軸に、再建に取り組むその姿を複数回にわたって追う。