今回は、テーマを「部門別採算制度」にフォーカスする。部門別採算制度は「意識改革」と並ぶ、稲盛改革の両輪である。今回登場するのは、常務執行役員で路線統括本部国内路線事業本部長の菊山英樹、執行役員で同本部国際路線事業本部長の米澤章の二人だ。路線統括本部は部門別採算制度の扇の要にあたる部署。なぜなら、本業である航空輸送の収支の差、つまり利益の最大化をミッションとしているからだ。

今でも破綻の原因を作ってしまったと
自責の念にかられる

――菊山は1983年の入社。情報システム、人事、労務を経験し、JAL破綻当時は収支資金計画の部長だった。 

【その4】執行役員・菊山英樹、米澤章の場合<br />「数字へのどん欲さ、再建への強い決意、<br />そしてスピード感が大きく変わった」常務執行役員・菊山秀樹(きくやま ひでき)「(稲盛名誉会長から)お前は評論家か!と言われ、大変なお叱りを受けたことがあります」
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菊山 まさにJALが破綻した時期に、その資金計画を担当していました。従って、JALが破綻した事に対して、私にも大きな罪があったと、責任を痛感しております。ですから、破綻後に私が役員をやるということは問題があるのではないかと、大西(当時社長、現会長)にも話をしたことがあります。

 破綻直前には(会社更生法の申請を伴う)「法的整理」か、(自主再建に近い)「私的整理」かで、侃々諤々の議論となりましたが、私は「法的整理」には反対の立場でした。なぜならば、お客様がJALから離れるというだけでなく、海外の破綻した航空会社のケースをみても、法的整理になった瞬間に信用不安が生じ、出発直前の飛行機が空港で給油を止められるということが、実際に起こったからです。