建築資材大手の大建工業は、これまでにない新たな畳を開発し、生産増強をはかっている。福島県の工場に畳表を作るラインを新設、岡山県の工場も既存ラインを増強し、全体で生産能力を1.6倍に引き上げる計画を打ち出した。
国内の天然イ草の生産は1970年頃をピークに減少の一途をたどり、現在、イ草農家は熊本県と岡山県を中心に数えるほどしか残っていない。代わりに中国産イ草が、年間1550万畳ほどの畳表市場の約8割を占めていた。
ところが近年、中国においてもイ草生産が減っている。真冬に裸足で畑に入って作付けし、真夏に刈り取るといった手間のわりに販売価格が低く、中国の農家も手掛けなくなっているのだ。
そうした環境下で東日本大震災が発生。以降、津波で流された畳の張替えや仮設住宅向けなどで、畳の需要は急増する。「フル生産でも間に合わない状態。出荷は昨年に比べ2割以上は増えている」(大建・岡山工場)。今後、復興需要が本格化するにつれて、イ草の品薄が懸念されているほどだ。
そこで畳の芯となるボード状の畳床でシェア9割を占める大建がいま、力を入れるのは“和紙の畳表”だ。
和紙を原料とする畳表は、イ草と同様の調湿性と触り心地を維持しながら、カビや変色、毛羽立ちを防ぐ機能を持つ。「天然モノに比べ品質のバラつきが少なく、扱いやすいことが畳職人にも受け入れられている」(大建工業)
伝統的な和室が減る一方で、住宅や飲食店などでは、洋室に和のテイストを加えたインテリアが流行っており畳に対して根強い人気がある。同社はこうしたニーズを汲み取り、和紙畳の織りパターンと色を拡充しデザイン性をアップ。また、フローリングの上に手軽に敷ける“畳カーペット”など新しい商品ラインナップを増やしている。
震災を機に住宅の見直しが広がるなか、「畳文化の継承に貢献したい」という同社。生産増強と商品開発を平行して続け、2015年には年産240万畳を目指す。
中国産イ草に代わる新しい“国産畳”の普及に、同社のみならず業界全体が期待を寄せている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)