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3.11の「喪失」~語られなかった悲劇の教訓 吉田典史

妻は死にたくて死んだんじゃない――。
「九段会館天井崩落事故」の遺族が抱く心の葛藤

――九段会館天井崩落事故の遺族、金子家規氏のケース

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第3回】 2012年2月21日
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 昨年3月11日に起きた大震災では、主に津波により2万人を越える死者・行方不明者が出た東北地方の被害に焦点が当てられている。しかし、「最初の犠牲者」は、実は東京都内で出ている。

 それは、千代田区にある宿泊・会議施設の九段会館(千代田区)で天井崩落事故の巻き添えになった女性2人だった。前連載「大震災で生と死をみつめて」では、遺族の悲痛な思いを紹介した。この事故は「人災」の可能性も見え隠れしていると、筆者は感じた。

 あれから1年、遺族はどのような状況に置かれているのか。事故の「その後」を追い続けることは、災害を想定した適切な危機管理を問い直す上で、重要な意味を持つ。筆者は、再び遺族への取材を試みた。


死の意味は自分で経験しないとわからない
今も続く「九段会館天井崩落事故」の迷宮

(上)九段会館天井崩落事故で亡くなった金子いづみさん。(下)自宅の庭で夫の家規さんと一緒に。

 「世の中の人は、私のような当事者にはなれない。絶対になれない……。『(遺族の)痛みを、苦しみを分かち合おう』と言うけれど、それはきれい事ですよ」

 金子家規さん(61)は、窓の外の庭を見ながら強い口調で答えた。太く、高い声が室内に響く。愛犬が、ストーブの前で気持ちよさそうに眠る。

 1月下旬、藤沢市(神奈川県)の閑静な住宅街にある自宅を訪ねた。前連載の取材で昨年6月下旬に訪れてから、2回目となる。

 金子さんは昨年3月11日、九段会館の天井崩落事故で、妻のいづみさん(51)を失くした。震度5強の地震により、会館1階大ホールの天井はくり抜いたように落ちた。そのとき、ホールでは東京観光専門学校(新宿区)の卒業式が行なわれていた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


3.11の「喪失」~語られなかった悲劇の教訓 吉田典史

東日本大震災からもう1年が経とうとしている。人々の記憶も薄らぎ始めた。しかし、国の復興対策はなかなか進まず、被災者・遺族の心の傷も癒えない。3.11がもたらした「喪失」は、日本人にどんな教訓を投げかけているのか。日本が真の復興を遂げられる日は来るのか。その問いかけをまだ止めることはできない。いや、止めてはいけない。遺族、医師、消防団員、教師、看護士――。ジャーナリストとして震災の「生き証人」たちを取材し続けた筆者が、様々な立場から語られる悲劇の真相を改めて炙り出す。

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