日本銀行は、2月14日に追加的な金融緩和策に踏み切った。これによって、長期国債の購入限度額が拡大されることとなった。
この決定を受けて、株高が進み、円高にストップがかかった。
これは、「今後いかに巨額の国債発行がどれだけ続こうとも、日銀が購入してくれる」という期待が広まったことによるのだろう。少なくとも、「日本国債がイタリアやギリシャの国債と同様の事態に見舞われることはない」と考えられたからであろう。
仮にこうした期待が正しいのであれば、安心して国債発行を続けることができる。消費税の増税ができなくとも、あるいは社会保障制度の見直しができなくとも、あまり心配する必要はない。総選挙を控えた政治家は、大威張りで「消費税増税は必要ありません」と言えるだろう。銀行や保険会社は、国債の値下がりを気にすることなく、国債を購入し続けられるだろう。円高による輸出の減少に青息吐息の輸出産業は、一息つけるだろう。
かくして、事態は政治家、財政当局、金融機関にとって望ましい方向に転換したように見える。
しかし、本当にそうなのだろうか?
今回の日銀の緩和策は、国債需給にどの程度の影響を与えるのだろうか? 政治力で押しさえすれば、日銀はいくらでも国債を購入することができるのだろうか? その結果、巨額の財政赤字は、貨幣によってファイナンスされ、日本経済はインフレに突入していくのだろうか?
これらの問題について、以下に検討することとしよう。
民間金融機関と
日銀による国債購入の仕組み
どんな経済主体であれ、国債を購入してバランスシートで国債保有額が増えれば、バランスシートの他の項目が変化しなければならない。
ごく単純化して言うと、民間の銀行の場合には、1990年代までは、負債側の「預金」が増えることと、資産側の国債が増えることが対応していた。しかし、2000年以降は、資産側の「貸付」が減少することによって国債の保有が増えている(ただし、強制的に「貸しはがし」をしているのではなく、企業の資金需要がないために受動的に貸出が減っている)。