ソフトバンクが昨年10月に設立した電力事業の子会社「SBエナジー」が早速、太陽電池業界に波紋を投げかけている。

 SBエナジーは、北海道帯広市と苫小牧市の計3ヵ所で太陽電池パネルの性能評価を行う太陽光発電試験場を建設。今年1月31日から、日本メーカー7社と海外メーカー3社の10社のパネルについて、発電特性をリアルタイムで公表し始めたのだ。

 太陽電池の発電量などの比較試験は、NTTファシリティーズがNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業を経て今年2月に山梨県内に完成させた実証サイトがあるが、リアルタイムの発電量などを公にするものは初めて。企業、家庭を問わず誰もが容易に特性を比較できるようになるため、パネルメーカーからは「ここまであからさまになるとインパクトは大きい」(電機メーカー担当者)と戦々恐々としている。

 試験場では、10社のパネルが並べて設置されているが、枚数や合計の定格出力はバラバラ。さらにSBエナジーはデータの補正を行わず、そのまま全体発電量の生データを公開しているため、「発電性能」を比較するためには、出力1ワット当たりの発電量を見るのが一番わかりやすいことになる。

 すると、驚くべき結果が明らかになってきた。一例として、帯広試験場の20日のデータを参考にしてみよう。

 1ワット当たりの発電量では、化合物系のCIS薄膜を製造する日本のソーラーフロンティア社が6.58ワットで1位だったが、2位、3位には、ともに中国系メーカーのサンテックパワー(同6.26ワット)、インリーグリーン(同6.15ワット)のパネルが入ったのだ。

 太陽光を電力に変換する割合である「モジュール変換効率」で世界最高峰の16.8%を誇るパナソニックのHIT太陽電池は6位に当たる6.06ワット。国内シェア1位のシャープは5.82ワットと、10社中、8位と下位に甘んじた。低価格の中国メーカーと、品質・性能で上回る日本メーカーという一般的に語られてきた構図は、ここではまったく当てはまらないことになる。

 とはいっても、あくまでこのデータは帯広試験場でのある1日を抽出したもの。同じ日の苫小牧試験場のデータで比べてみると、京セラが2ヵ所で1位、パナソニックは苫小牧の陸側試験場で2位、シャープも海側試験場で2位、一方サンテックパワーが5、6位となるなど順位はめまぐるしく変わっていることがわかる。

 太陽光発電に詳しいグローバル商事の菱田剛志代表も公表結果について、「HIT太陽電池は、通常の太陽電池が性能を発揮しにくい高温化でも効率を発揮することに特徴がある。ほかにもカネカのパネルも高温化で抜群の特性を発揮するなど、一つ一つのパネルに合った環境がある」と指摘。一方、SBエナジーのデータ公表については「太陽電池が普及していく上で比較データの公表は重要な取り組みとなる」と評価している。

 SBエナジーは少なくとも今年12月まではデータを公表し続ける予定。7月には再生可能エネルギーによる発電の全量買い取り制度もスタートし、さらなる普及機運が盛り上がるが、今後の導入に当たっては季節ごとのデータなど長期的に検証することも必要となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

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