エレクトロニクス業界の決算説明会は日本中の中小企業を震え上がらせた。

 自動車とともに日本経済を支える二本柱であるエレクトロニクス業界の12年3月決算は巨額赤字や大規模な人員合理化など、惨憺たるありさまとなったからだ。震災、タイの大洪水、そして超円高等々、3月決算が絶望的な数字にならざるをえないことくらい、製造に関わる人々であれば誰もが覚悟していた。だが2月に入り、エレクトロニクスメーカー各社が続々と明らかにした2011年度決算は、彼らの覚悟を切り裂き、恐怖を塗り込むものとなった。

数千億円規模の赤字が続々…
「軽電」と「重電」メーカーで明暗くっきり

 ソニーは赤字幅を当初の900億円から2200億円へと大きく下方修正した。これでソニーはなんと5年連続の赤字決算となる。しかも2000億円を超える赤字が2年続くことになる。ソニーの苦境は尋常ではない。

 かつて「世界の亀山モデル」とまで言われた液晶テレビの覇者、シャープの落日ぶりも胸を突く。昨年10月時点では60億円と予想されていたが、一転、2900億円もの赤字計上に追い込まれた。大幅赤字の原因は言うまでもなく、テレビ事業の低迷と液晶パネル価格の暴落だ。

 NECの大規模な人員削減も耳目を集めた。2012年度の上半期中に、国内外で1万人を削減するという。削減する1万人のうち正社員が5000人にのぼる。NECグループの正社員総数11万人のうちの4.5%に相当するという厳しいものだ。収益が厳しいから人員合理化が不可避となるが、人員合理化に伴う費用急増で収益はさらに下振れする。NECは1万人削減に伴う費用として400億円の特別損失を計上。最終利益は当初予想された150億円の黒字から、1000億円の赤字に転落する。

 しかしなんといっても衝撃的だったのはパナソニックだ。尼崎工場(兵庫県尼崎市)の薄型テレビ用パネル生産の一部停止、人員削減の前倒しなどの構造改革にともなう莫大なコストが発生することを見込んで、昨年10月末時点で、12年3月期は4300億円を越える巨額赤字になりそうだとの見通しが公けにされていた。シャープやソニーの赤字を大幅に超える欠損が出るということだった。