
映画「かくかくしかじか」は71歳のオヤジが見ても面白く、初夏のヒット作となっている。原作は東村アキコの自伝漫画で、主演は永野芽郁。公開時のスキャンダルはよそに好演している。原作を読んだときにも、還暦を過ぎたオヤジが涙をこらえきれないほど感動したのだが、その良さは映画でどのように表現されているのか(文中敬称略)。(コラムニスト 坪井賢一)
天才漫画家・東村アキコは
どうやって誕生したのか
映画「かくかくしかじか」(関和亮監督、ワーナー・ブラザーズ)を見た。5月中旬の公開以降、上映を続ける映画館が全国でかなりあり、実写映画は興行収入10億円を超えたらヒットといわれる中で、順調に数字を伸ばしているようだ。
原作は東村アキコの自伝漫画(全5巻、集英社)で、主演は永野芽郁。公開時の彼女のスキャンダルで出足がどうなるかと思っていたが、大した影響はなかったようだ。良かったね。
東村アキコが通った宮崎市の絵画教室の日高先生役を、大泉洋が演じている。いかにも鬼教師な振る舞いで「描け―っ!」と叫ぶシーンが宣伝で流れていたので、印象に残った読者も多いだろう。師弟の衝突、逃避、後悔、感謝、別離を描いていて、若者からシニアまで共感を呼ぶ作品に仕上がっている。※以下、本稿は大いにネタバレを含みます
美術大学進学を目指す宮崎市の高校生が、同級生に誘われて絵画教室へ通い始めるが、先生のあまりの厳しさに逃げ出そうとするところから物語はスタート。本心では漫画家を目指す主人公と、洋画家へ育てようとする厳しい先生との9年間に及ぶすれ違いが、実に面白く、切なく、リアルに描かれていく。