公務員の「定期異動」がサービス低下を招く深刻な実態写真はイメージです

 自治体職員の異動は約3年周期で繰り返されるが、税務から教育など、専門性の異なる業務領域へ移ることも多い。ノウハウの蓄積を妨げ、業務クオリティの低下を引き起こす懸念から、この異動には度々批判の声が上がる。筆者も異動の弊害を強く感じているが、それ以上に危惧するのは、異動がもたらす、若手・中堅職員の将来への不安である。

地方自治体の業務は驚くほど多岐にわたる

 自治体によって差はあるが、以下に並ぶおびただしい数の部署の例を、さっと流し読みしてほしい。

「総務局」、「政策局」、「財政局」、「国際局」、「市民局」、「文化観光局」、「経済局」、「こども青少年局」、「健康福祉局」、「医療局」、「環境創造局」、「資源循環局」、「建築局」、「都市整備局」、「港湾局」、「消防局」、「水道局」、「交通局」、「会計室」、「教育委員会事務局」、「選挙管理委員会事務局」、「人事委員会事務局」、「監査委員事務局」、「農業委員会」、「議会局」等々。

 この局の下には部がある。たとえば、「総務局」の下には「総務部」「秘書部」「政策部」「プロモーション本部」など、異なる専門性を必要とする部があり、さらに、部は課へと分岐していく。

 自治体職員が自ら「転職」と表現するくらいだが、こうした異動を繰り返しながら、自治体職員はよく業務を回せているとも感じる。企業の経営・管理職経験者からすると、職員の大多数が「専門性の異なる業務領域への異動」を繰り返すことに、一抹の不安を覚えるのではないだろうか。