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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第20回】 2012年3月5日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

スーパースターひとりの頑張りを
美談に終わらせてはいけない

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献身的なカリスマに依存する支援活動

 14年連続で年間3万人を超えた自殺者を減らそうと、近年、自殺防止に対する活動が進んでいます。ネーミングの問題などまだまだ十分とは言えませんが、以前に比べて多くの人が関心を持つようになってきました。

 活動の成果のひとつとして、国や県といった大きな行政単位での統計だけではなく、市区町村などが個別に数値を公表するようになりました。全体としては依然として3万人を割っていませんが、なかには目覚ましく自殺者が減った自治体も出始めています。

 どのようなシステムを使って自殺者を減少させたのでしょうか。

 関心があって実態を聞いてみると、特に画期的な仕組みをつくったわけではないといいます。保健師さんやボランティアの方など、ものすごく頑張る個人が自らの生活を顧みず、見返りも求めず、献身的に奉仕したからこそ実現したという側面がかなり強いというのです。

 福祉活動や災害支援活動で注目され、成果をあげているところには、世間的に知られているかどうかは別として、ある種の献身的な人の存在があります。このような個別の人の役割を超えた活躍で支えられているのです。

 こういう話しを聞くと、このような人に対する尊敬とともに、このような人が社会を支えているという事実を実感します。その一方で、往々にしてそれら献身的な人のやる気や能力にすべて依存してしまう傾向に不安も感じます。その人が「燃え尽きて」辞めてしまったあと、活動が尻すぼみになったという話はあとを絶ちません。その人が自治体の職員ということになると、彼らの異動を契機にすべてが崩壊してしまったという話も聞こえてきます。

 現在の日本の福祉活動や災害支援活動は、つまるところ個人の力に支えられている部分が大きいと思います。

 しかし、そもそも福祉や支援といった活動は、ある程度システム化されて誰でもできるのが望ましい姿です。たとえ献身的な人がいなくても、変わらずに活動が機能するのがあるべき姿だと思います。そういう人がいるからこそ成り立っている活動は、美談である一方で、社会システムとしての弱さを感じざるを得ません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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