会議で慎重に決めたはずなのに判断を誤ってしまい、それが組織にとって致命的なものになることがある。なぜ慎重に判断したはずなのに誤ってしまうのか。そのようなケースで問題となるのが属人思考だ。組織としての判断ミスをなくすには、この属人思考について知っておく必要がある。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
風通しが悪く、意見を自由に言えない組織風土
企業や役所などの不祥事が発覚するたびに、世間から疑問視されるのが、「なぜそのようなおかしなプロセスがまかり通ってきたのか」ということである。だれかが勝手におかしなことをやったわけではなく、ちゃんとした手続きを経て、組織としての意思決定を慎重に行ったはずなのに、後になっておかしな判断だったということになる。
おかしな判断によって組織は大きな損害を被ることになったりするのだが、なぜそのようなことが起こるのか。そこで問われるのが組織風土だ。
だれもがおかしい、あるいは危ないと感じる案件が全会一致で通っていたということが、不祥事をはじめ重大な判断ミスが明るみに出た際にしばしば報道されるが、それは決して特殊な会議のあり方ではない。
ちょっと危うい感じがしても、提案者に疑問をぶつけたり反対意見を表明したりするのも気まずいし、ここは提案者に任せるしかない、といった気持ちで黙っていると、「特に異議がないようですので、全会一致で承認ということにしたいと思います」という議長の声が響き、内心釈然としないまま次の議題に移る。これは、どの組織でもよく見かける光景だろう。
自由に意見を言えないような組織風土がある職場を風通しの悪い職場と言ったりするが、自分にとって影響力のある人物の意向を気にかける日本人の組織では、決して珍しいことではないのだ。