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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第22回】 2012年3月19日
著者・コラム紹介バックナンバー
香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

万人に通用する方法論はない。
「臨機応変」は果たして死語なのか

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人間的治療から機械的治療への大転換

 2月12日、NHKスペシャル「ここまできた!うつ病治療」が放送されました。

 うつ病の診断と治療の最前線を紹介するというテーマで、番組では大きく分けて2つのトピックが語られます。

 一つは脳の血流が画像に表示される装置「光トポグラフィー」による診断です。

 何らかの言葉を復唱させた場合、躁うつ病に罹患している人は脳のある部分の働きが弱いといいます。この特性に目をつけ、光トポグラフィーで脳の血流量を測定して得られたデータに基づき、うつ病か否かを診断しようというものです。日本でも、神奈川県の病院などが装置を保有しています。

 もう一つは、磁気発生装置で脳に刺激を与える治療方法です。

 感情を司る扁桃体に刺激を与えて機能を回復させれば、うつ病患者の感情が爆発するのを抑えられるという理屈です。番組では、何十年にもわたって薬を飲み続けても治らなかったうつ病患者が、頭にヘッドギア状のものを装着してわずか30分ほどの治療を受けただけで症状が好転したとする事例が紹介されます。

 放送の翌日から、私の患者さんたちも口々に番組について語り始めました。

 「光トポグラフィー検査をやっている病院を紹介してほしい」
 「磁気刺激による治療はいつ日本に入ってくるのか」

 そう言われても、うつ病は番組で紹介されたような科学的な手法だけで診断できるものではなく、問診という医師と患者の人間的な関わりを踏まえる必要があります。しかもかつて機械的な治療、薬だけに頼った治療が主流だったころ、患者さんの多くがもっと心の通ったきめ細かい人間的な治療をしてほしいと訴えておられました。

 もちろん人間ですから、多少の矛盾はあって当然です。しかし、極端から極端に振れる危険性を感じざるを得ません。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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