イトーヨーカ堂、イオン…名経営者から学んだ「必死であり続けること」の尊さ

 靖二がイズミで育ててもらったように、私自身もこれまで、多くの経営者から大事なことを教えてもらった。

 イトーヨーカ堂の創業者・伊藤雅俊さん(現・名誉会長)には、まだダイソーが軌道に乗る前の90年代(私に言わせれば潰れかけの頃)に面会する機会を得た。初期からヨーカドーの店頭で移動販売をさせてもらったこともあり、私にすれば大恩人で、小売業界の大先輩。直接会えるというだけで舞い上がっていた。

 他の社員と3人でオフィスにお邪魔したのだが、VIP用のエレベーターの中で私は同行した2人に「えぇかお前ら、3分で終わるけぇの。会えるだけでも幸せなんじゃけぇ、余計なこと言うなよ」と言い聞かせた。2人は「えー、3分ですかぁ」とがっかりしている。

 当たり前だ。その少し前に、銀行の頭取が地元のスーパーの社長を紹介してくれるというので訪ねて行ったら、「いらっしゃい、ダイソーさん、存じてますよ。ところで今日は何のご用ですか?」。「○○○です」。「分かりました、役員会に諮ってご返事申し上げます」で終わりだった。それを思えば、天下のイトーヨーカ堂の伊藤オーナーが、私なんぞと何を話すことがあろう。

 ところが、伊藤さんは100円ショップの商売について、最初から私に質問責めである。3分のはずが30分、それどころか1時間、1時間半と、ガンガン質問して、どんどんメモしていく。途中、「おい、セブンの開発を呼んでくれ」と秘書に指示して、気になった端から「うちは、これの値段どうなってるんだ」などと、とにかく細かい。部下が質問に答えられなかったりすると、われわれの前だろうがお構いなしに叱りつける。大企業の経営者というのは細かいことは気にせず、泰然自若とどっしり構えているものだと想像していたのだが、まるで違った。

 逆に、経営者が持つべき謙虚さというのはむしろ、どんなに会社や事業の規模が大きくなっても、必死であり続けることなのだということを、伊藤さんから習った。私が社内で厳しく社員を叱り、怒鳴りつけてでも仕事を教えるようになったのは、それ以来である。

 その後も伊藤さんは、ダイソーの経営が厳しいときに時に電話をくれて、こうおっしゃってくれたことがある。「矢野さん、経営者にとって金が足りないというのは、日常茶飯事だ。おれっちも紆余曲折してやっと今日があるんだから、お金がなくなったらおれっちに相談しろや。貸してあげるから、1人で悩んで苦しむなや」。そして「金で返せないなら株でもいいぞ」、さらに「株で返すのが嫌なら、貸し続けてやるぞ」と。

 今思えば、私もまた必死だったから気にかけてくれたのだろうし、そこが魅力だったのだろう。軌道に乗って余裕しゃくしゃくの経営者から成功話を聞いても面白くないに違いない。