家庭紙を立て直すには、なぜフェラーリは日本の高級車の3倍で売れるのかを、私だけでなく社員が理解しなければならないと考えました。儲からないのを他部署のせいにする体質も改める必要がありました。

 凝り固まった社員の意識を変えるために2年間、毎週土日に泊まり込みの研修をやってマーケティングやマネジメントを叩き込みました。社員はローテーションだったから数ヵ月に一度でしたが、私は毎週土日休みなくこれを続けた。

 研修ではなぜ上手くいかないのかを社員に発表させ、机を叩きながら“吊し上げ”ました。いまだったらブラックと言われそうなやり方です。

ファミリーの株式評価額が上昇
服役後、仕事もせずやっていける理由

──それはオーナーだからできたと。

 当時の役職は専務取締役家庭紙事業部長ですが、30歳そこそこの若造でした。サラリーマンだったらできっこないです。

 私が家庭紙を離れるとき、当初500億円だった売上は倍増。経常利益で80億円を計上し、赤字を解消しました。5年間で利益を160億円ほど引き上げたわけです。

 今だから話しますが、事件後の対応でもオーナーとサラリーマン社長(である大王製紙現社長の佐光正義氏)の責任感の違いは大きかった。

 私の借金を返すためにどう資金を捻出しようかとなったとき、ファミリーが持っていた大王製紙関連の株式を売ることになりました。

 実は、その売値が佐光氏のおかげで2.5倍以上の440億円になったのです。

 当初はファミリーが大王製紙の経営者として残っていたので非上場株は純資産価額方式で評価する必要があった。しかし、問題を起こした私が顧問から外されただけでなく、父や弟も大王製紙から排除されたので、ファミリーの株式売却は当事者間の取引から第三者との取引になり、税務上の制約が外れて評価額が跳ね上がったのです。

 おかげで服役後、こうして仕事もせずやっていける。皮肉なものです。

 一方で、この440億円のディールは社員や株主のためになったのでしょうか。ファミリーを排除して佐光氏は権力を安泰にした。しかし、そのために大王製紙に約300億円(純資産価額方式による評価額と実際の売値の差額)を余計に使わせているのです。

 これはサラリーマン社長の悪いところと言えます。会社のリスクは自分のリスクじゃないわけです。