「セーフティネット住宅」が登場したものの…

 普通の高齢者でも、独り暮らしだと賃貸住宅の入居はままならない。家主にとって、孤独死や死亡後の対応が煩わしいからだ。残された家財道具の処分だけでも手がかかる。

 一方で、今後日本全体で身内が近くにいない一人暮らしの高齢者や高齢世帯は急増する。要介護度は軽いが、自宅暮らしは難しい状況に陥る。その人たちを受け入れる賃貸住宅が少ない。そこで、国交省はこうした普通の賃貸住宅を供給する新しい住宅制度をスタートさせた。皮肉なことに、札幌火災の直前の昨年10月のことだ。

「セーフティネット住宅」である。「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法」(住宅セーフティネット法)が施行されたことによる。

 法律による入居対象者は、高齢者だけではない。障害者や被災者、月収15万8000円以下の低所得者である。省令では、外国人やホームレス、犯罪被害者、DV被害者、生活困窮者を加えている。さらに自治体の判断で新婚世帯や児童養護施設退所者、UIJターン転入者、LGBTの人などに広げることができる。

 高齢者だけでなく低所得者も一緒に入居できる。生活保護受給者が多かった「そしあるハイム」や「たまゆら」の入居者はすべてカバーできる。現行制度では受け入れられない人たちが今度は丸ごと入居できる。

 セーフティネット住宅は、戸建ての空家かマンションやアパートなど集合住宅の空き室を家主が自治体に登録すると、改修費や家賃補助を受けられる。

 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と違って、新築ではなく既存の住宅に限定される。ただの賃貸住宅と異なるのは、自治体ごとに設ける「居住支援協議会」が入居相談を受けたり入居者の見守りをすることだ。具体的には、地域の企業やNPOなどが「居住支援法人」の指定を都道府県から受けて生活支援に入る。

 制度が始まって半年近く経ったが、4月9日時点での登録戸数はわずか78件、607戸に過ぎない。国交省は、開始後3年半で17万5000戸という壮大な目標を掲げたが、出足で躓いてしまった。とても目標には達しそうにない。

 都道府県別の登録状況をみると、大阪府の237戸が突出して多い。全体のほぼ4割を占める。88戸で2位の山梨県を大きく引き離している(図1)。