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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

幼稚園から高校卒業まで学費は無料
山東省エン州市に見る福利厚生競争の始まり

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第97回】 2012年3月22日
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 多い時は月に3回中国に飛ぶことがあるし、地方都市や外国人がなかなか入れない内陸部まで足を伸ばしているので、うぬぼれではないが、自分では、結構、中国の現状を知っていると思っている。しかし、実際、地方都市を回ると、中国を知っていると自慢するのは自分の思い込みに過ぎないと思い知らされ、時々、自信喪失に陥ることがある。

 今回の山東省訪問もそうだった。今度の訪問先は東営市とエン(六の下に允)州市であった。東営市についてはこれまで数回も訪れたことがあり、日本国内での講演でもかなり取り上げていた。「中国のドバイ」という私が作った紹介の仕方も、日本企業の中でかなり浸透していると聞いている。

 しかし、エン州市はまったくはじめての訪問先だ。石炭の産地として知られるという程度の予備知識しかもっていなかった。中国国内の省レベルの行政区のなかで、GDP3位を誇る山東省に属している地方都市なので、そこそこ豊かだろうとは思ったものの、そんなに豊かな地域とは認識していなかった。

 孔子の故郷である曲阜のはずれにできた高速鉄道の「曲阜東站(曲阜東駅)」で、上海からやってきた他の関係者たちと合流してからエン州に向かった。初春の気配が濃くなってきたせいか、道路の両側に時々見られる柳の枝には、浅黄色に見える淡い緑が微かに宿っている。だが、路傍にたたずむ建物には古いものが多かった。沿海部と比べてどうしても貧相に見えてしまう。「やっぱり差が大きいね」と心の中ではそう呟いた。

教育費はすべて市が負担

 だが、会見に来た経済担当の陳秋生副市長と同市の現状についての雑談をしたら、意外な事実を教えられた。

 「エン州市では、幼稚園から高校卒業まで教育に関わる学費は一切取っていない。すべて市政府が負担する」

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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