従業員一人ひとりが「自分事」と考えなければ
オフィス移転は成功しない

 オフィス移転は、ビジネスと従業員の意識を変革する絶好の機会だ。経営改革とイコール、と言っても過言ではない。とはいえ、働く環境が一新したからといって、そこで働く従業員の意識が直ちに変わるものではない。

「これは経営者も従業員もオフィス移転を経営的な視点で捉えず、物理的なイベントとして行ってしまうからです。不動産会社や設計者に提案されるまま、自社のビジネスや業務に必ずしも合ってないところに不相応なオフィスを構えるなど、無駄な投資をしているケースが多々、見受けられます」

 流行のオフィスをつくると、当初はハネムーン効果で従業員の満足度が上がるものの、働き方に合っていないと、結局、マイナスの結果を招いてしまうのだという。

「おしゃれなカフェスペースなども、従業員が明確に利用目的を理解してこそ、社内のコミュニケーション活性化、個人の効率・意欲の向上といった成果につなげることができます」

 経営目標を達成するために、社内の制度や仕組み、組織が作られ、業務フローやプロセスが構成される。これらをうまく回していく手段としてFMを活用すべき、と古阪さんは話す。

「業務内容や社風に見合ったオフィスが提供されてこそ、従業員は、創造性に富み、生産性と効率性の高い仕事ができるようになります。その一方で、従業員一人ひとりにも、自社の課題と解決策を認識し、それに適したファシリティのあり方を”自分事”として考えてもらう必要があります」

 「オフィス移転やオフィスづくりは、管理部門がお膳立てをして進めるもの」と考える従業員に、オフィス移転を自分自身の課題として捉えさせるには、ユーザーインボルブメントの仕掛けが必要だ。例えば、オフィス移転の計画段階で従業員に業務プロセスや働き方の課題をヒアリングすると、聞かれた従業員の側にも課題への気づきが生まれる。

「総務を中心に、経営企画や財務、人事、ITなどが連携した移転事務局を作り、その下に分科会やワーキンググループを置くのも一手です。そこに巻き込まれることで、オフィス移転という一大事業を自分事として意識しやすくなります」 

 近頃では移転業務を社外にアウトソースすることも多い。その場合にも、社内調整は移転事務局の役割であることを理解した上で、プロジェクトを担当する外部の会社をコントロールすることが重要、と古阪さんは言う。「丸投げではいいオフィスはつくれません」。